学術論文「名誉毀損」スラップ訴訟、研究者側の勝訴判決

 経済ファンドの実態を研究した学術論文を雑誌に発表した研究者に対し、経済ファンド関係者が「名誉毀損」などと主張して当該者に損害賠償を求めたスラップ訴訟で、東京地裁は5月19日、名誉毀損は成立しないとして原告側の訴えを全面棄却する判決を出した。

 明治大学の野中郁江教授(会計学)が雑誌『経済』(新日本出版社)に発表した論文(2011年6月号)に対して、当該企業の経営者らが「名誉毀損」として提訴したものである。

 この問題は学問の自由や表現の自由にもかかわるものとして、研究者らを中心に支援の動きが起きていた。野中教授や支援者らはこの訴訟を「スラップ訴訟」と位置づけ、全面的に争ってきた。

 スラップ訴訟(SLAPP)とは、相手と比較して経済力や権力がある勢力が、自分たちにとって意に沿わない言論を封じるために、相対的に経済力や権力がないと判断した相手の足元をみながら、恫喝の手段として訴訟を悪用するものである。

 5月19日の東京地裁判決では、相手側の主張には根拠がないと判断し、「本件論文は、専ら公益を図る目的で執筆されたものというべきである」「その表明する意見ないし論評の前提としている事実が重要な部分について真実であることの証明があったということができる」「不当行為が成立するとはいえない」などと野中教授側の主張を全面的に認める形で、原告側の請求を棄却した。

 一方で野中教授側は、相手側がこういう訴訟を起こすこと自体が不法行為として反訴をおこなった。しかし反訴の部分については請求を棄却し、この案件がスラップ訴訟であるかどうかという法的な判断は避けている。

 スラップ訴訟の違法性について踏み込んだ判断がされなかったことは残念だが、この案件については名誉毀損に当たらないと判断されたことは、喜ばしいことである。

 近年、すでにどこかで公表されているレベルの資料をまとめ直しただけでも、それが気に入らないという勢力が「名誉毀損」「人権侵害」などと難癖をつけ、元ネタの資料を作った人ではなく、まとめ直した個人に言いがかりを付けて不当な攻撃を加える事例もしばしば報告されている。

 新聞報道を元ネタにして差し障りのないニュースの感想を書いただけのブログに対して、それを快く思わない者から虚偽の削除要請が出されたり恫喝されるといった事件は、当ブログでも何件か巻き込まれたことがある。

 また他の方も「近畿地方の某国立大学学生による集団いじめ事件」「別の近畿地方の某国立大学学生による集団暴行事件」などで、事件は事実でそれを元にした新聞報道も事実だと確認されているにもかかわらず、加害者やその関係者と思われる者からの嘘の通報があったとして一方的に消される被害を受けているという告発がブログ上でされている。

 「名誉毀損」は、「被害者」がそう主張すれば自動的に成立するものではない。言論の自由や表現の自由、また分野によっては学問研究の自由など、執筆者の権利とも密接にかかわるものである。

 一方的な言いがかりによって、執筆者の人権が侵害されることは、二度とあってはならない。この訴訟については相手側が控訴しないことを強く願う。また同時に、こういうスラップ訴訟を起こす者や、訴訟までいかなくとも相手を一方的に恫喝して気に入らない言論を封じようとする者が、二度と現れないように強く願っている。

(参考)
野中先生勝訴!「スラップ訴訟」退けた(雑誌『経済』編集部ブログ 2014/5/19)
ファンド経営者ら研究者を高額賠償提訴 支援者 「学問の自由守れ」(しんぶん赤旗 2013/6/14)