毎日新聞2023年3月24日付(ウェブ版)が、『賛否呼んだ学校選択制 9年後の検証で分かった親と学校の温度差』を掲載している。

大阪市で導入されている、市立小中学校の学校選択制。当時の橋下徹大阪市長の強い意向で、地域住民や教育関係者からの強い反対や懸念の声を押し切って、2014年度より導入されている。
大阪市における学校選択制は、24行政区各区ごとに、また小学校・中学校の校種ごとに、細かい仕組みが異なる部分もあるものの、本来の校区の学校と居住地域の校区に隣接する地域の校区の学校、ないしは居住する行政区の学校すべてから選択する制度となっている。導入の状況や細かい制度設計については、区担当教育次長を兼任する区長に委ねられている。
小学校入学時および中学校入学時に、在住の区が示した条件の中で、1校の学校を選択する。特に希望しない場合は、本来の校区に指定されている学校への入学が保障されている。各学校側は設備面などを考慮しての校区外からの受け入れ可能人数を事前に示し、受け入れ範囲内なら希望者を全員受け入れることになり、希望者が受け入れ可能人数を上回った場合は抽選となる。
毎日新聞の記事では、学校選択制の状況について、導入から9年経過した状況を、大阪市教育委員会の検証調査の結果に独自取材を加味する形で追っている。
学校選択制の状況
記事の内容については本文に譲るとして、大阪市における学校選択制は、導入構想当時に懸念していた指摘通り、よい結果とはなっていないようにも見受けられる状況になっている。
学校選択制の利用率は1割弱程度となっている。市の調査によると、当時の橋下徹大阪市長や、市政与党会派の大阪維新の会が掲げたような「学校間の競争」を理由にした選択はあまりなく、通学区域に指定されている学校と自宅との位置関係で「隣の校区の学校の方が近い」などの場合に選択制が活用されている傾向があるとも分析されている。しかしそれならば、調整区域の設定などの通学区域の弾力化などでも対応可能な案件にもなっている。
また通学区域に指定されている学校が小規模校の場合、地域在住の児童生徒や保護者が小規模校を避け、近隣の比較的大きな学校を選択する傾向もあるとされている。大阪市では学校の積極的な統廃合方針を掲げていることからも、学校統廃合への不安と、統廃合の流れ加速の悪循環が起きることも気になる。
学校選択制では、現場の負担が増すだけで、プラスの効果は得られていないことが浮き彫りになる。大阪市の学校選択制は、他地域では学校選択制が導入された地域では弊害が指摘されるようになって見直しが進んでいたという状況のもとで、時代に逆行するような形で導入された経緯もある。やはり、現場に混乱をもたらすだけで、導入する必要がない状況にもなってしまっている。
やはり効果が見いだせない学校選択制は、廃止の方向で見直しを図っていくことも必要であろう。