大阪府が進めている高校統廃合。2012年度以降20校の公立高校の募集停止が決まっているが、大阪府教育委員会はさらに、2023年度~2027年度の5年間で、府立高校9校程度の新規募集を停止する方針を固めている。
2023年1月23日の大阪府教育委員会会議で素案を審議し、3月までに正式決定するとしている。
高校統廃合の背景
大阪府では2000年代から府立高校統廃合がおこなわれてきた。さらに維新の府政になってからは、2012年施行の府立学校条例(「教育基本条例」として構想されていたもの)により、「3年連続定員割れの府立高校は統廃合を検討する」という条項が明記された。
この10年間で、「3年連続定員割れ」の要件に該当した府立高校の統廃合・募集停止と近隣校への機能統合が進められてきた。この中には、「学校所在地周辺の自治体で唯一の高校を閉校し、地域の生徒の受け皿や街づくりに支障が出かねない状況を作る」「困難な状況に置かれた生徒の受け皿や、ていねいな学習指導をおこなってきた高校を統廃合する」などの状況も生まれていた。
「大阪府立高校再編整備方針」(2013年)、および大阪府立高等学校・大阪市立高等学校再編整備計画」(2014~2018年度、2019~23年度)により、以下の府立高校および大阪市立の高校(2022年度大阪府立として移管)が募集停止となり、他校との統廃合や機能統合された形になっている。
- 2016年度募集停止:池田北(池田市)・咲洲(大阪市住之江区)
- 2017年度募集停止:西淀川(大阪市西淀川区)
- 2018年度募集停止:北淀(大阪市東淀川区)・大正(大阪市大正区)・泉尾(大阪市大正区)
- 2019年度募集停止:柏原東(柏原市)・長野北(河内長野市)
- 2020年度募集停止:勝山(大阪市生野区)
- 2022年度募集停止:西(大阪市西区)・南(大阪市中央区)・扇町総合(大阪市北区)・都島第二工業(大阪市都島区)・第二工芸(大阪市阿倍野区)(※2022年度募集停止の5校は大阪市立→2022年度大阪府移管)
- 2023年度募集停止:島本(島本町)・茨田(大阪市鶴見区)・泉鳥取(阪南市)
- 2024年度募集停止決定:平野(大阪市平野区)・かわち野(東大阪市)・美原(堺市美原区)
このほか、大阪市立だった工業高校3校(東淀工業・泉尾工業・生野工業)について、大阪市教育委員会がまとめた再編計画を大阪府が引き継ぐ形で、開校時期は未定ながらも府立の新工業系高校として統廃合する計画も進んでいる。
大阪府教委では、入学する生徒数の減少ベースがこれまでと同水準で推移すると見込み、5年間で9校程度の募集停止の方針を示した。
なお、府政与党の大阪維新の会は2021年、約150校ある公立高校(府立と、当時の大阪市立を含む)を、2035年をめどに約100校までに統合することを、吉村洋文大阪府知事に提言している。
しかしながら、これまでの強引な統廃合・募集停止によって、学校や地域の状況に悪影響を与えてきた現状がある。これまでの統廃合計画は白紙から見直し、機械的な統廃合は避けるべきではないか。また統廃合の根拠となっている大阪府条例についても、廃止を含めた検討をしていく必要がある。
(参考)
◎大阪府立高、生徒募集9校程度で停止へ 23年度から順次(日本経済新聞 2023/1/20)