東京都内の公立中学校3年の生徒が受験する中学生英語スピーキングテスト(ESAT-J=English Speaking Achievement Test for Junior High School Students)が、2022年11月27日に実施予定となっている。
このスピーキングテストについては、実施方法などに重大な問題があり、中止を求める声が続いている。
スピーキングテストの結果は、都立高校入試の点数として反映されることとなっている。それに伴い、受験できなかった、あるいは障がいなどで受験できない状況・あるいは不利になる状況にある生徒への扱いはどうするのかといった扱いも取り沙汰されている。
またそもそも、都内全体で約8万人の中学生が受験する試験で、採点者の採点基準のすりあわせの問題があり公正な採点は不可能ではないかという指摘がある。また、当日の会場の試験監督をどうするのかといった課題もある。当日の試験監督については派遣で集めているというが、11月中旬になってもまだ集まっていないともされている。
試験内容についても、試行テストで「スピーキング内容を録音するとき、隣の席の人の声が入り込んだ」などの課題が出たのにそのまま強行することで、試験結果に影響が出ないかなどの不安も出ている。
また当日の会場についても、自分の通う中学校ではなく、自宅や中学校から遠い会場を指定されている場合も多いという。さらに自転車での来場は禁止で、公共交通機関などの利用が求められているという。区外・市外の会場を指定され、会場まで電車やバスを乗り継ぐなどして時間がかかる、交通費も1000円近くかかり自己負担になるなどの声もあがっている。「自分の住む地域では、その地域からはバスでしか行けない場所を会場に指定された。地域では同学年の生徒が多くてバスに乗りきれない可能性もある。バス会社からは、バスの増発などは発表されていない」などの不安も出ている。
さらに、民間業者(ベネッセ)に試験業務を委託していることでの個人情報の扱いの不安、受験のための個人情報が十分な説明なしに半ば強引に集められていたことなども指摘された。ESAT-Jの出題形式と、ベネッセが手がける英語4技能検定試験「GTEC(=Global Test of English Communication)」の出題傾向が酷似していて、利益誘導にあたりかねない問題が出ているとも指摘されている。
スピーキングテストは日曜日におこなわれるが、試験場で交付される受験報告用紙を翌日月曜日に中学校に提出する仕組みになっているとして、代休などはないことも指摘されている。
テストのやり方には問題が多いとして、教職員・保護者や、教育学・英語教育の研究者などから中止を求める声が強くあがってきた。
この問題では都議会でも審議され、テストを合否判定に使用しないことを求める議案も出されるほどになった。都政与党「都民ファーストの会」からも議案に賛成する造反が出るなどしたが、この議案は否決された。しかし当日が近づくにつれ、反対の声は収まるどころか、ますます強まっている状況になっている。
2022年11月15日には参議院文教科学委員会での議会質問もおこなわれている。
採点の公正性も担保できないまま入試に使用されること、さらに試験運営の問題点などを考えれば、強行することは極めて重大な悪影響を及ぼすことになってしまう。
2020年には、大学入学共通テストの「英語リスニング試験」の導入構想が問題となり、導入計画撤回に追い込まれた経緯がある。今回の東京都のスピーキングテストについては、共通テストと同等、あるいはそれ以上の問題を抱えていることになる。
このような公正とは言えないテストを強行されることは、東京都の受験生を混乱に陥れ、強い負担を強いることになってしまう。また東京都のみならず、他県にも波及し、まねをして導入すると言い出す自治体が出てくる危険性もある。極めてまずいことであり、中止が求められている。