東京都の「英語スピーキングテスト」、導入中止求め保護者が要請

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東京都立高校では、高校入試に「中学校英語スピーキングテスト(ESAT-J:English Speaking Achievement Test for Junior High School Students)」を導入する計画となっている。

スピーキングテストとは

スピーキングテストは、中学校3年の11月に受験する。成績はA-Fの6段階評価となるが、東京都教育委員会が示した基準により0点~20点に数値換算されて調査書(いわゆる内申書)に掲載され、当日の学力調査と調査書の評定(いわゆる内申点)にスピーキングテストの成績を加算した形で総合的な合否判定をおこなうとしている。スピーキングテストの点数もいわゆる内申点に準じる扱いとして合否判定の資料とされる構想となっている。

テストの運営については、教育産業大手の「ベネッセ」に委託するとしている。

スピーキングテストについては、「大量の生徒を大量の採点者で採点することで、採点者によって採点にばらつきが出ることは避けられず、公正性に疑問が出る」「聴覚障害や吃音などを抱える生徒など、特定の属性を持つ生徒が不利になりかねない」などの指摘が出ている。

導入反対の要請

スピーキングテスト導入反対を訴える保護者団体が2022年8月26日、都議会に対して、スピーキングテストの中止と、実施された場合でも入試に活用しないことを求める要請をおこなった。要請には、都議会4会派の都議が調整に協力し、都議会与党会派の都議も参加した。

保護者らは、スピーキングテストの運営について、以下のような問題を指摘した。

スピーキングテスト受験には、生徒の顔写真をベネッセのサイトに登録する必要がある。しかし保護者からは、「学校でテストのお知らせの文書が配られただけで、顔写真登録などは十分に説明されていない」が、「ネット上でのアンケートでは、保護者の大半がこの規約の存在を知らない」などとして、人権への配慮や責任に問題があると指摘した。またベネッセが過去に情報漏洩を繰り返していたことや、情報漏洩を恐れて登録しない場合は「テストの点数が0点になる可能性もある」としていることにも、保護者が批判をおこなっている。

またテスト結果返却は1月中旬で、願書の提出まで2週間しかなく、志望校変更などを検討する場合には時間が短すぎるという指摘も出された。

導入は問題

このような問題を抱えるスピーキングテストを、あえて導入する必要があるのだろうかという気がしてならない。

英語学習については、文部科学省など教育行政や一部の論者は、これまで「読み・書き」に偏っていたとして、会話力重視の方向に転換したいなどとしている。スピーキングテスト導入も、そういう風潮のもとで検討されたものだとも見受けられる。

一方で入学試験に導入するとなると、問題が生じる。スピーキングという形式の特性から、採点者によって採点基準が異なることもありえ、事前に採点基準の調整なども必要になってくる。しかし大量の答案を大量の採点者で採点する形になることから、採点者間の採点基準の調整などは極めて困難で、採点者の「当たり外れ」によって左右されることにもなりかねない。

また試験を民間事業者に委託することでの情報管理・情報漏洩の問題も不安要素となる。しかも過去に情報漏洩問題を起こした経緯がある事業者というだけに、不安も拭えない。

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