安倍晋三元首相の死去に際して、葬儀の日時にあわせて各地の教育委員会が、学校に半旗掲揚を要請した事例が、次々と明らかになっている。
8月に入り、川崎市と仙台市でそれぞれ、市教育委員会が半旗掲揚の要請をおこなっていたことがわかったと報じられている。
川崎市の事例
川崎市では2022年7月11日付で、川崎市教育委員会から市立の小中学校・高校・特別支援学校全校、および市立図書館など教育委員会所管施設に対して、安倍元首相の通夜がおこなわたる7月11日午後~葬儀がおこなわれた翌12日まで、学校で日の丸および川崎市旗を掲揚する場合は、弔意の表明として半旗にするよう要請する通知を出した。
川崎市教育委員会では、先に市長部局で同種の通知文が出されていたことを受け、「協力要請であり、難しければ実施しなくてよい」と市長部局の通知文を一部アレンジして、市立学校など教育委員会所管施設向けの通知にしたとされる。
政治的中立性に抵触するのではないかと指摘された問題については、川崎市教委の担当者は、「注釈などを付記したことで問題はなかったと考えている」とする見解を示した。
報道によると、教員が子どもたちに「安倍元首相が亡くなった悲しみを表すために半旗を掲げる」と説明をおこなった小学校があったとも指摘されている。
仙台市の事例
仙台市でも同様に、安倍元首相の通夜・葬儀がおこなわれた7月11日から12日にかけて、市立の小中学校・高校・中等教育学校・特別支援学校に半旗掲揚を要請する通知を出した。
市長部局からの依頼を受けて、教育委員会でもそれにあわせたものだとされる。市教委は「協力のお願いであり、実際に実施した学校数は把握していない。強制力はない。政治的中立に抵触しないと考えている」としている。
報道によると、「市教委の指示に従った。教職員には説明したが、保護者や児童には知らせていない」として半旗を掲揚した小学校教頭の証言が紹介されている。その一方で、市内の教職員から教職員組合宛に「教職員への説明などはなく掲揚されていた。経緯が知りたい」などとする情報が寄せられているともされる。
通知を出すことそのものが弔意の強制につながりかねない
両自治体の教育委員会とも、お願いにすぎず、強制力はなかったなどとしている。
しかし実質的には指示と受け取られて、学校現場が対応した形になったことも相当数あったとみられる。
また政治的中立性の問題についても、特定の政党を支持したりそれに反対するための教育をおこなってはいけないという教育基本法の規定に抵触する危険性が生じることになる。
弔意の問題については内心にもかかわることであり、公的な機関が特定の考え方に誘導するような形になるのは問題が生じるということにもなる。
これは結果的に、強制の効果を生じさせることにもつながりかねない。
