滋賀県大津市立保育園に通っていた園児(2022年度時点では小学校2年)が、通っていた保育園でいじめを受けて登園できない状態になり、適応障害などを発症した問題を調査していた、大津市教育委員会の第三者委員会は2022年7月6日、園児へのいじめがあったと認定する調査報告書をまとめ、大津市長宛に答申した。
この問題では、当該の園児が性別違和を訴え、周囲からそのことを理由にしたいじめがあったと指摘されている。
この園児をめぐっては、保育園が園運営上の課題や方針などをまとめて公表していた文書で、園運営上の課題として、匿名ながらも当該園児の事例に触れて「LGBTへの理解を深める」などとする方針を出していたことで、園児の保護者が「匿名にしているが、表現内容からは特定される可能性がある。同意なく公表されたのは人権侵害・アウティングにあたる」として、2020年12月末に訴えた問題も起きている。この問題では約半月後の2021年1月半ばに報道され、大津市側が報道と前後して文書公開を中止したことで、保護者側は民事訴訟を取り下げた。

いじめについても、保護者側が「性別違和を理由にしたいじめがあった」と訴え、詳細な調査を申し入れていた。その一方で、いじめ防止基本法や当時の大津市の条例では「法令上、未就学児児童へのいじめを想定していなかった」という課題が浮かび上がった。

第三者委員会では、児童が4歳児クラス・5歳児クラスに在籍していた時期に、当該園児へのいじめがあったと認定した。身体的・戸籍的には男児だが性自認は女児だというこの児童に対し、ほかの児童が「男なのに女の格好をしている」などとからかう、園児が「自分は女児」と話したことをほかの児童が「嘘つき」呼ばわりする、「あっちいけ」「ついてくんな」などといわれて仲間はずれにされるなどのいじめを認定した。4歳児クラス在籍時には6件、5歳児クラス在籍時には5件、計11件のいじめを確認した。児童は5歳児クラス在籍時の途中から登園できない状態になった。
また保育園の対応については、「成長過程でよく起こりうるトラブル」という認識で対応していたが、第三者委員会では「保育園でもいじめが起きる可能性があることを認識すべきだ」と指摘した。また職員間の連携や情報共有が不十分だったことにも触れている。
就学前の時点でもいじめが起きると指摘されたことは、重く受け止める必要がある。当該園や大津市だけでなく、全国の保育現場で考えていくべき課題となってくるであろう。