高校生だと名乗るツイッターアカウントから2022年6月29日に発信され、広く拡散されているツイート。
高校で、参議院選挙の仕組み等を描いたポスター(下の写真)を掲示したら、先生に「学校での政治的活動は禁止されてる、剥がせ」と言われた。
若者に選挙へ行けと言う前に、こんなにも政治に対し敏感な学校の空気を変えた方が良いのでは?同級生には有権者もいる。こんな高校が県一の進学校という現実 pic.twitter.com/93PC4wku0P— 政治系高校生@ハートのメガホン (@5HFnEtMHU1lyMuJ) June 29, 2022
発信者の県名や学校名を特定するような記述はないが、このツイート内容通りならば、学校側の対応は誤った運用にあたる。
ツイッターアカウントからは、掲示したポスターとされる画像も添付されている。
添付されている画像を見る限り、参議院選挙の投票方法を解説したうえで「国政について調べてみよう」と訴えている内容である。選挙管理委員会の啓発ポスターレベルか、高校の公民の教科書レベルの内容となっている。
しかし学校側から「政治的活動だから」として撤去を求められたとする経過。生徒手帳とされる画像も添付されているが、当該校では校則で「校内での政治活動禁止」の規定があるとされる。
しかしそもそも、この事案は「政治的活動」に該当しないと考えられる。
「政治的活動」の定義は?
文部科学省が2015年10月に出した通知によると、「政治的活動」の定義は以下のように位置づけられている。
「政治的活動」とは、特定の政治上の主義若しくは施策又は特定の政党や政治的団体等を支持し、又はこれに反対することを目的として行われる行為であって、その効果が特定の政治上の主義等の実現又は特定の政党等の活動に対する援助、助長、促進又は圧迫、干渉になるような行為をすることをいい、選挙運動を除く。
27文科初第933号
高等学校等における政治的教養の教育と高等学校等の生徒による政治的活動等について(通知) 2015年10月29日
ツイッターで出された画像を見る限り、掲示物で訴えた内容は、特定の政治上の主義、あるいは特定の政党・政治団体への支持ないしは不支持を呼びかけているものではないのは明らかである。政治的活動にはあたらない以上、学校側から「政治的活動」を理由に撤去を求める指導などは無理がある案件である。
撤去を求める根拠となりうるものが仮にあるとすれば、校舎管理や掲示場所の管理などといった、学校の管理運営上の都合がある場合という、全く別の理由から生じたものだということにはなる。しかし見た限り、そこまで深刻な状況になっているとは見受けられない。撤去を求める側が示した理由は「政治的活動」一辺倒で、管理運営の都合には触れていない様子。生徒の自主的・自治的活動を保障するという教育的観点、また子どもの意見表明権などからみれば、できるだけ柔軟に対応すべきではないかとも考えられる。
「政治的中立」の元に過剰な萎縮
2016年より18歳選挙権が導入された。そのことで、高校3年生の一部が選挙権を持つことになることから「高校生の政治的活動」の問題も議論になり、国会でも多くの質疑がされていた。
高校生の政治的活動については、公職選挙法の規定や一般的な社会的通念に準じて広く認めるべきとする見解も強く出されている。しかし文部科学省は「校則によって校内での政治活動禁止を規定することは差し支えない」などとする見解を出している。
文部科学省は「18歳選挙権」導入以前から、「政治的」な動きには過剰に神経をとがらせて萎縮させようとする風潮も見受けられた。各地域の教育行政でも、18歳選挙権とそれに関連した「高校生の政治的活動」の問題にとどまらず、小中学校も含めて、ある特定のテーマ(時事問題や、意見が大きく分かれる社会問題など)に触れることがあたかも「政治的中立に反する」「政治的活動にあたる」かのように扱われる風潮が押しつけられている。そして、「政治的とみなされうる可能性があるテーマについて触れること自体がタブー視される」とばかりに現場の教員を萎縮させている現状がある。そういう影響が生徒にも及んでしまうことになっている。
このようなことは、生徒が自ら主体的に考える力を奪ってしまうことになり、よくない影響を与えるのではないか。
当該校での対応を見直すことを求めるとともに、そういう対応を呼び込むような教育行政の誤った風潮についても検証し改善を求めていく必要があると感じる。