文部科学省は2022年3月29日、主に高校2~3年で使用する高校教科書の検定結果を公表した。
2022年度高校1年生より新学習指導要領での教育課程が実施されることになっている。新学習指導要領のもとで学ぶ生徒向けの教科書について、主に2・3年で開講することが想定されている教科・科目についての検定結果公表は、初めてとなる。
国語
国語では科目の再構成があり、従来は大きく現代文(近代以降の文章)・古典という区分けだったのが、従来の現代文科目が「論理・実用」と「文学」に区分けされる形になっている。これは単純な「現代文科目の細分化」ではなく、重大な問題をはらむ形になった。
1年時の必修科目も、従来の「国語総合(標準4単位、現代文と古典の配分時間は半分ずつが目安)」から、「現代の国語(実用的論理的な文章が中心。表現に関する内容も)」2単位と「言語文化(現代文のうち文学的な文章と古典をひとまとめにした)」2単位に分けている。1年開講科目の教科書編成の際、「論理的な文章と文学的な文章の線引きはしにくい」と指摘され、「現代の国語」で小説を掲載した教科書が出たことへの扱いなどが問題になっていた。
1年時の学習内容を踏まえて2~3年で履修する科目は、従来の現代文に代わり「論理国語」「文学国語」の2科目に再編された。論理国語では評論や実用文などの文章を中心とし、文学国語は小説など文学的な文章を中心とするなどとした。
教科書検定の結果、「論理国語」の教科書13点のうち2点について、「参考資料」扱いで小説が掲載された。また「文学国語」教科書11点すべてが評論文を掲載した。
2~3年時の科目についても、教材の扱いの線引きができない・学校側の要望もあったなどとして、このような形になったとしている。
そもそも、「論理的か文学的か」という問い自体が二者択一とはなりえないものとなっている。分けられない・線引きしにくいものを無理やり区分けしようとする無理難題を立てることで、学校での授業のあり方や、教科書の内容を大きく困惑させることになってしまっている。
地理歴史・公民
地理歴史・公民では、「従軍慰安婦」や「強制連行」などの記述をとった教科書が、政府の統一見解と一致しないとして検定で修正指示が出され、「慰安婦」や「動員した」などの表現に訂正されたと報じられている。
1冊だけ「従軍慰安婦」の記述があるが、それは1993年8月に当時の河野洋平内閣官房長官がおこなった「河野談話」の原文で「いわゆる従軍慰安婦」と表現されているものをそのまま引用したものだという。それ以外の本文で「従軍慰安婦」と表現されていたものについては、すべて「慰安婦」に訂正指示された。
「従軍慰安婦」記述が変更されたことについては、維新議員が2021年に記述を問題視する質問主意書提出や予算委員会質問をおこなったことも背景に、政府が「不適切」だと閣議決定したことを反映した形になった。
「強制連行」についても書き換えを指示されるなどした。「強制連行」の表現を残した教科書もあったが、「政府は、戦時中に朝鮮半島から労働者がきた経緯はさまざまであり、『強制連行』とするのは不適切と閣議決定をした」とする記述を付記した上で検定を通過したという。
教科書記述では、政府見解にあわせるよう指示される傾向が近年強まっているが、その傾向を踏まえたものとなってしまっている。
このことも懸念される傾向となっている。