大阪市生野区での学校再編問題

『産経新聞』が2022年3月19日、『中1ギャップも要因になる街中の学校再編問題』という記事を出している。

中1ギャップも要因になる街中の学校再編問題
大阪市生野区で進められている市立小中学校の統廃合に、一部の保護者や地元住民らが反発している。少子化に伴う措置だが、地域の実情を顧みず行政主導が過ぎるという。た…

記事では、大阪市生野区での学校統廃合問題についてまとめている。

生野区の学校統廃合の背景

大阪市、および生野区での学校統廃合については、以下のような背景がある。

大阪市では2010年の審議会で、「全学年が1学年1学級」「地域の児童生徒数推移予測で、児童減少の傾向が続く」など小規模となっている学校・将来的に小規模校の状況が続くと見込まれる学校については、近隣校との統廃合も含めた学校の適正配置を検討するという方針を出している。橋下徹大阪市長(当時)は2012年、小学校を約300校弱から3分の2程度に統廃合することの検討を打ち出した。

地域の少子高齢化や、児童数減少・学校の小規模校化の傾向が他地域よりも進んでいた生野区では、生野区役所が計画を具体化する形で、他区に先駆けて具体的な学校名を挙げて学校適正配置の方針を打ち出した。区の西部地域について、2016年時点の12小学校・5中学校を4小学校・4中学校に再編して学校規模を適正化し、「一小一中」体制にして小中連携教育をおこなうとした。

推進する側の主張としては、▼小規模校では人間関係が固定化するのでいじめなどが起きた場合その関係が固定化するからクラス替えを可能にできる複数学級が必要、一定規模の学校だと生徒も多く、また教職員も配置されるので学校行事などの幅も広がり、より効果的な教育活動ができる。▼複数学級が設置されることで、同学年の担任教員同士が指導方法を打ち合わるなどで指導力の向上や情報交換などをおこない、複数の教員の目で指導しやすくなるなどのメリットがある。▼いわゆる「中一ギャップ」などに対応し、小中連携を進める。などというものだった。

その一方で、地域からは、▼小規模校では児童生徒一人一人に目が届きやすく、教員が一人一人の課題や弱点を十分に把握して、きめ細かな指導がしやすいメリットがある。▼学校統廃合によって学校が遠くなり、統合校として想定されている場所へは徒歩30分以上かかる場所もあるなど、通学に問題が出る。▼地域住民の意見を十分に反映せず、行政主導で強引に進めている。▼学校は災害時の避難所にもなっていて、仮に統廃合された場合、敷地が売却されるなどして避難所がなくなれば、防災の観点からも問題。生野区は住宅密集地でもあり、防災面はとりわけ懸念される。などといった指摘が出され、地域の合意は十分に得られず当初の計画は難航していた。

このことを反映してなのか、維新市政が条例を変え、学校統廃合には住民合意は必ずしも必要とはせず、行政主導でおこなえるようにするなどの措置をとった。維新議員が、生野区での統廃合反対の住民の声を問題視するような形で市会で質疑し、それを受ける形で条例が提案され、維新と公明の可決で成立した経緯である。

一方で市民からは統廃合反対の声が強く渦巻いている。2020年以降に問題化したコロナ禍では、「密」を避けることが提唱された背景からも、小規模校では「密」を避けやすい、分散登校などはせずに済んだなどのメリットも指摘された。

その一方で市会の条例改正なども反映して、生野区では一部の学校について統廃合が決定している。2022年4月には、4小学校と1中学校を統合して義務教育学校1校を設置すること、2小学校を統合して中学校敷地に統合新設小学校を併設する形で小中一貫校へと移行することの、2組の統廃合がおこなわれることになっている。

強引な手法は問題

生野区の学校統廃合では、地域住民から強い疑問や懸念をもたれたまま、学校再編が進んでいるような形になっている。このことで地域の分断にもつながっているという指摘がされている。

学校再編や統廃合をおこなうにしても、個別の事例ごとに、地域住民へのていねいな説明と納得・合意が必要になってくる。しかし生野区では、そのプロセスが十分におこなわれたのかどうかというのは検討を要する状態になってしまっている。

また必ずしも教育的な条件から出発したものではないという指摘もある。教育学の研究者によると、「少人数学級で学力向上という事例はある」とした一方で、「学校規模と教育的効果の相関性は必ずしも検証されているわけではない」という指摘がされているという。この指摘も重要なものではないかともうかがわれる。

学校統廃合問題については、行政主導で強引におこなうのではなく、地域住民の声をていねいにまとめながら考えていく必要がある。

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