日弁連は2022年2月17日、『政府見解により教科書の「従軍慰安婦」「強制連行」等の記述を変更させる動きに関する会長声明』を発表した。
2021年、文部科学省が教科書会社に対して、中学校・高校の社会科教科書の「従軍慰安婦」「強制連行」などの記述について、政府見解に沿った記述をおこなうように求め、教科書会社が訂正申請をおこなう事案が起きた。
維新議員の質問がきっかけ
この事案の背景には、維新議員の国会での質問と、それを受けての政府方針があった。
2021年4月、維新の馬場伸幸衆議院議員(当時維新幹事長、現維新共同代表)が、「従軍慰安婦」「強制連行」の教科書記述についての質問主意書を出した。これを受けて当時の菅義偉内閣が「『従軍慰安婦』『強制連行』は適切ではない」とする政府見解を出す答弁書を閣議決定した。

さらに維新の藤田文武衆議院議員が2021年5月、衆院予算委員会である中学校教科書を名指ししながら、同じ趣旨を質問した。菅義偉首相(当時)や萩生田光一文部科学相(当時)は答弁で、学校教科書での「従軍慰安婦」記述を不適切とし、来年度以降の教科書検定に反映するよう対応していきたいとする方針を示した。
これらの政治的な動きを背景に、文部科学省が教科書会社の担当者に説明会をおこない、教科書の記述を変更するよう事実上の圧力をかけたことが指摘された。教科書会社は2021年9月までに、中学校用教科書・高校用教科書あわせて5社29点で、「従軍慰安婦』『強制連行』に関する記述を訂正する訂正申請を出した。

この措置の背景には、2014年に当時の安倍内閣のもとで「政府見解がある場合には教科書内容もそれに沿って記載することを求めた」という教科書検定基準の改定がおこなわれたことがあると指摘されている。
声明ではこれらの流れについて、以下のように批判している。
時々の政権が新たな見解を示すことで教科書の記述が変更させられるという事態は、国家(政府)による教科書内容統制と評価されるべきものであって、前述の憲法の趣旨から到底許されるものではない。
声明で指摘された内容に同意
声明で指摘された内容は、全くその通りだと感じる。
この間の動きは、政治や政権の意向によって教科書の内容を左右し、介入・統制するということになっている。
これでは教育の独立性・自主性を軽視したものであり、また学問的な真理の探求も軽視するということにもなってしまう。決して看過できないことである。
政府は方針を改めるべきではないか。