埼玉県川口市立中学校で発生したいじめ事件で、「いじめに関する公文書に誤りや事実と異なる内容があり、訂正を求めたが拒否された」として被害生徒側が不訂正処分の取り消しを求めた訴訟で、さいたま地裁で2022年1月19日に第2回口頭弁論が開かれ結審した。
川口市は生徒側の主張を認め、訂正に応じる決定をおこなったことを明らかにした。今後生徒側と協議の上で訂正内容をすりあわせる方針だとしている。
このことを受け、生徒側は提訴を取り下げることになった。実質的には、生徒側の主張が受け入れられた形になる。
いじめ事件の経過
このいじめ事件は2016年、当時中学校2年だった男子生徒が、所属していた部活動でいじめを受け、また顧問教諭からの暴行など不適切対応も受け、不登校に追い込まれたとして訴えていたものである。
当該いじめ案件では、「いじめ行為に関する損害賠償訴訟」「いじめに関する公文書の情報開示請求での不適切対応を問う訴訟」「情報公開された公文書の誤りの訂正を求める訴訟」の3件の訴訟がおこなわれたが、いずれも生徒側の勝訴、ないしは生徒側の要望が受け入れられた形での決着となった。
いじめ関連文書
いじめ関連文書については、生徒側が情報開示請求をおこなったが、一度不開示処分となったのちに開示がおこなわれた。しかし開示された内容には多数の誤りがあったとしている。
生徒側によると、名前や日付の間違いなどの誤りが78か所あったとし、うち誤りが明白な38ヶ所について訂正を求めたが拒否されたとして、2021年7月に訴訟を起こしていた。
市は当初、「文書作成者の当時の認識であり、訂正の対象にならない」として請求棄却を求めていた。
しかし生徒側が起こした別の訴訟、いじめ対応の責任を問う訴訟で、2021年12月に市の対応が不適切だと認定されて市が生徒側に損害賠償を命じる判決が出て、その後確定したことを受け、市はこの訴訟についても方針転換をおこなった。
2022年1月12日付で訂正に応じる方針を決定し、生徒側から指摘された78ヶ所すべてについて、生徒側との協議の上で訂正をおこないたいとした。
一定の解決方向が見えた形になっている。しかしそこに至るまでに、生徒側に強い負担を与えてきたということにも目を向けていく必要がある。当該案件ではきちんと対応するとともに、今後同様の不適切対応が起きないようにしていくことも重要になってくる。