大阪府立懐風館高校の「黒染め訴訟」で、原告側は2021年11月11日、指導の違法性を認めなかった二審大阪高裁判決を不服として最高裁に上告した。
「茶髪を禁じた校則は違憲で、判決には法令違反がある」と訴えている。大阪府側は上告しない。
この訴訟では、同校に通っていた女子生徒が在学中、生まれつき髪の毛の色が茶色っぽいにもかかわらず「校則」という名目で教師らから髪を黒く染めさせられるなどの「指導」を受けたことを違法だとしているものである。生徒は染髪料の影響で皮膚がただれるなどの症状が出たほか、教員から人権侵害的な暴言を受けたこともあったという。2年の途中で学校行事への参加を禁じられるなどして不登校状態になった。
3年進級時には、当該生徒のクラスの名簿に名前が載っていなかったことや生徒の席を用意していなかったことなどの行為があり、生徒は卒業まで登校できなくなった。弁護士事務所などに教員を派遣してもらう形で授業を受けて2018年3月に卒業したという。
2017年秋、事件の経過がマスコミで大きく報道された。報道をきっかけに「ブラック校則」の問題が社会問題化し、国会や大阪府議会をはじめとした各地の地方議会でも校則問題が議題にあがり、また見直しを求める社会的な動きにもつながった。
懐風館高校の「黒染め」訴訟では、一審・二審ともに、学校側がクラス名簿に生徒の名前を掲載していなかったなどの行為を違法と認定して、約33万円の損害賠償を大阪府に命じている。その一方で裁判所が違法を認定したのは、学校・大阪府が自ら非を認めた範囲のみに限られ、校則および生徒指導については学校側の主張を大筋で採用して違法性を認定しなかった。
そもそも、茶髪だから黒く染めろという校則の規定自体に、重大な人権侵害的な問題がある。しかも生まれつき茶色がかった髪の毛にもかかわらず、染色・脱色していると決めつけられて人権侵害的な暴言を含む強要を受けたとされていること(※学校側は否定し、裁判所は学校側の主張を採用)など、さらに問題を上塗りしていることにもなる。
一審・二審では、認定範囲は十分だとはいえない。最高裁で画期的な認定がなされることが望まれる。