「大阪市立の高校にかかる財産の大阪府への無償譲渡は不法」住民訴訟

大阪市立の高校が2022年度に大阪府に移管される問題に関連して、「大阪市民の財産を守る会」は2021年10月7日、「市立の学校にかかる財産の大阪府への無償譲渡は不法」として、住民訴訟を提訴した。

経過

大阪市内での中等教育については、明治時代に大阪府立の学校も設置されたが、実業学校中心に大阪市立の学校も設置されてきた。旧制中学校や高等女学校などは大阪府が中心となっておこなうとする取り決めが明治時代におこなわれたものの、その後時代が下り、志願者の急増による入学難対策や、大阪府が大阪市外の郡部での学校増設の緊急性や必要性に追われて大阪市内までは手が回らなくなった状況が生じたことなどの要因で、大阪市立の旧制中学校や高等女学校も新設された。

太平洋戦争終戦後の学制改革により、旧制の中等教育学校をベースにして新制高等学校が発足したことで、大阪府立の高校のほか、大阪市立の高校が発足した形になった。

住民に影響があるような入試事務などは大阪府と大阪市で協議の上で統一して実施してきたなどの背景から、特に問題はなかった。

また大阪府立高校が平均的な普通科教育を主としていたことと比較して、大阪市立の高校は実業教育が中心で、また普通科系の高校でも府立と比較して個性的なカリキュラムを実施するなどの特色化を図っていた背景があった。

しかし2010年代に入り、大阪の府政・市政に介入した大阪維新の会が、大阪市を解体する「大阪都構想」なる施策をぶち上げたことに関連して、各施設の担当エリアや得意分野などの違いや相互補完体制などとなっていることなどの状況を全く無視して、「大阪市立と大阪府立で類似の施設を持っているから二重行政」だと難癖を付けた。公衆衛生機関、大学(大阪府立大学と大阪市立大学)、特別支援学校、公立病院、港湾、水道など各分野に難癖が付けられたが、高校についても「大阪市立と大阪府立の高校があるのは二重行政だ」と難癖を付けた。

いわゆる「大阪都構想」なる施策は2015年と2020年の2度にわたって住民投票で否決されている。しかし市政与党の維新は、「一元化」などと称して各分野での府市統合をなし崩し的に強行し続けている。政令指定都市・大阪市の枠組みそのものの廃止という野望は阻まれたものの、各分野の事業を骨抜きにして市の権限や財産などを大阪府につけ替えることを強行している。

高校についても「大阪都構想」の動向とは関係なしに、「市立の高校を府立に移管する」という策動を進めてきた。しかもその際に、高校の校舎・敷地・備品など大阪市が所有している財産の一切を、大阪府に無償譲渡するという暴挙をおこなった。

教育的視点や歴史的な観点からみても高校の府立移管は道理がないとする批判が起きているが、市民の財産の毀損となるという角度からもこのような措置には道理がないとする批判が起き、住民監査請求がおこなわれた。

高校の移管(市立としての廃止)に関する条例は市議会で維新と公明党の賛成で可決されたものの、それに関する約1500億円の財産譲渡については市長の裁量でおこなわれ、視界での議決を経ていない。これは地方自治法違反であるという指摘である。

しかし住民監査請求は2021年9月に却下された。それを受けて訴訟に至ったという経過である。

私見

そもそもの話として、大阪市立の高校を大阪府に移管する必要性自体がない。

それに加えて、大阪市立の高校計21校にかかる財産を大阪府に無償譲渡することは、大阪市民の財産を毀損することにもつながる。

具体例としては、すでに現大阪市立の工業高校3校については、大阪市が統廃合も含めた再編を検討し、再編検討策は府立移管後に具体化する方針が決められている。廃校となった敷地などの使い道や処分については市が決められず、大阪府として決めることになり、仮に売却となった場合は大阪市ではなく大阪府に売却益が入るということになる。これでは、大阪市としての地域の街づくりのあり方にも重大な影響を及ぼすことにもつながりかねない。

手続き的にも疑念がもたれるものをそのまま強行することも、将来に禍根を残すことになる。

原告の主張を支持する。

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