教科書採択「事実誤認発言でのミスリード」として監査請求:山口県岩国採択地区

2020年度中学校教科書採択をめぐり、山口県岩国市で事実誤認発言によるミスリードがあったなどとして、異議申し立てがおこなわれている。

朝日新聞(web)2021年7月8日『育鵬社歴史教科書の採択めぐりミス指摘と監査請求 岩国』が報じている。

育鵬社歴史教科書の採択めぐりミス指摘と監査請求 岩国:朝日新聞デジタル
 公立の小中で使う教科書について、昨年8月に岩国採択地区(山口県岩国市、和木町)協議会が中学校歴史教科書に育鵬社版を継続して選んだ経緯をめぐり、岩国市で異議申し立てが続いている。協議会での話し合いで、…

岩国市と和木町で構成する岩国教科書採択協議会では、2020年度に育鵬社の社会科歴史教科書が継続採択された。育鵬社教科書については、「日本教育再生機構」関係者が編集に携わり、教科書の記述が極右的・歴史修正主義的・復古的な内容となっているとして強い批判が起きている。

市民らは「協議会の席上で事実誤認発言があり、育鵬社教科書採択へのミスリードになった」と訴え、ミスリードに基づいた採択によって育鵬社の教師用指導書などを購入したことは不法だとして監査請求をおこなった。

記事によると、従来から採択していた育鵬社版と東京書籍版を比較する文脈で、委員が「編集方針がちがう教科書になるのは、(子どもたちに)多少混乱があるのではないか」と話したとされる。これは誤認発言だが、協議会事務局の市教委職員はこの発言を訂正しなかった。

教科書が他社に採択替えになっても、学年をまたいで継続使用する場合は前年度の採択のものをそのまま使用することになる。

社会科歴史的分野の場合は、1年時に教科書が給付される。学習指導要領での標準的な時間配分では、歴史的分野は、1・2年時にいわゆる「π型」で地理的分野と並行して、ないしはいわゆる「座布団型」で地理的分野を履修したあとの2年時に履修したのち、3年時のはじめに歴史の残りの部分を学び6月前後から公民的分野に入るというスケジュールになる。生徒が2年ないしは3年に進級したときは1年時に給付された教科書をそのまま使用し、教科書の採択変更や内容改編があったからといって新しい教科書に取り替えるわけではない。生徒にとっては教科書が途中で変わることもないので、編集方針が違う教科書による混乱はないということになる。

当初の委員の投票では育鵬社6票・東京書籍6票の同数で拮抗していたが、委員発言後に改めて投票をおこなうと育鵬社8票・東京書籍4票となり、育鵬社が継続採択されたという。このことにより、委員の誤認発言が育鵬社採択のミスリードにつながったという疑念が持たれた。

育鵬社教科書については記述内容に問題がある。歴史修正主義などの視点でも問題であるが、それを抜きにしても、育鵬社教科書に掲載されている特異な主張・記述は、学問上の標準的な理解・およびそれを基にした学校教育の場での標準的な解答内容とはかけ離れていることで、高校受験や高校以降での学習に支障が出かねないとも指摘されている。それだけでなく、育鵬社教科書を支持する勢力が採択の際に強引な手法を使うことも指摘されている。

委員の誤認発言が放置され、その結果育鵬社教科書の採択につながったのなら、それは問題だということにもなる。

市教委事務局は「問題はなかったと考えている」としているという。しかし経過について、今一度再検証の必要があるのではないかとも考えられる。

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