佐賀県鳥栖市立中学校いじめ訴訟:一審判決変更も市の責任認めず

「佐賀県鳥栖市立中学校1年だった2012年、同級生からいじめを受けPTSDを発症した」などとして被害に遭った男性が、加害者の元同級生8人と鳥栖市を相手取り損害賠償を求めて訴えていた訴訟で、福岡高裁は2021年7月12日、いじめを認めなかった一審佐賀地裁判決(2019年12月)を一部変更し、「いじめがあった」として、8人に対して約400万円の損害賠償を命じる判決を出した。一方で鳥栖市の安全配慮義務違反は一審に続いて却下した。

いじめの経過

いじめは2012年に発生した。

佐賀県鳥栖市立中学校いじめ事件
佐賀県鳥栖市立中学校で2012年、当時1年の男子生徒に対するいじめがあり、被害者が精神的な後遺症を負った事件。経過鳥栖市立中学校に2012年度に入学した男子生徒は、入学直後からいじめを受けるようになった。被害生徒は加害生徒13人から、腹を殴

被害に遭った元生徒の男性は、同級生から連れ出されてエアガンで撃たれる、現金約100万円を脅し取られるなどのいじめを受けたという。被害者側によると、担任教師がいじめの様子を目撃しながら放置するなど、学校側がいじめを把握していながら対応しなかったとも訴えている。

2013年3月に事件がマスコミ報道されると鳥栖市教育委員会はいじめを認め、教育長が「いじめではなく犯罪行為に等しい」と発言した。

生徒側は2015年に提訴した。しかし鳥栖市は提訴後に態度を変え、「いじめ調査やその結果は、被害者保護者側の強い態度によって従わされたもの。原告側が主張するいじめの内容は過大であり、安全配慮義務違反はない」と主張した。また加害生徒側は、原告側がいじめと指摘した行為の一部についてはあったと認めながら「悪ふざけでありいじめではない」と主張した。

一審判決では、加害者側が自ら認めた行為の一部については不法行為だと認定して約400万円の損害賠償を命じた。しかしいじめとは認定せず、悪ふざけと判断していた。また鳥栖市の安全配慮義務違反も認めなかった。

一審判決を不服として、被害者側が控訴していた。

控訴審判決では、一審で悪ふざけと判断した部分を変更し、8人のうち5人については「継続的ないじめがあった」、残る3人についても「継続的とはいえないがいじめというべき行為があった」と判断して、損害賠償責任を認めた。しかし鳥栖市の安全配慮義務違反は認めなかった。

原告側は「いじめが認められた部分については評価するが、市の安全配慮義務違反が認められなかったことを不服としている」として、上告も検討するとしている。

認定範囲が不十分ではないか

一審で認められなかったいじめが、控訴審ではいじめと判断されたことは、一定の前進ではある。その一方で、原告側が重視していたと思われる「市の安全配慮義務違反」が認められなかったことは非常に残念に感じる。

報道によると、原告側はこのように述べたということ。

原告「市側の責任は認められませんでした。これでは『いじめの被害者は死んだ方がいい』と言われているようなものです。当時の自分や、同じ被害に苦しむ子どもが救われないと思いました」「いじめの被害を減らすためにも今後も機会があれば声を上げていきたい」

代理人弁護士「いじめがあったことを予見できなくてもしかたないという判決だ。見て見ぬふりをすれば、教師の責任にならないとする消極的な判断は理解しがたい」

上告するかどうかは原告側の判断によるものとなるだろう。その一方で、いじめに遭っても十分に救済されないという現状は、非常に残念に感じる。

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