鹿児島県出水市立中学校いじめ自殺訴訟:和解へ

鹿児島県出水市立中学校2年だった女子生徒が2011年9月にいじめを苦にして自殺した事件で、遺族側が出水市を相手取り約1200万円の損害賠償を求めた民事訴訟の和解が成立する見通しになったと報じられている。

2020年12月に鹿児島地裁が和解案を勧告していた。2021年5月19日におこなわれた和解協議では、出水市が和解金を支払い、自殺事件発生後の市の対応が十分ではなかったことを陳謝するなどとした。一方で報道によると、遺族側が「いじめ」と指摘した複数の事案については事実があったとして和解案でも記載されるものの、それぞれの事案についてはいじめかどうかの評価は明記せず、またいじめと自殺との因果関係についても明記されないともしている。

遺族側は和解案を受け入れる方針とし、また出水市側も市議会との調整などを経て正式に和解を受け入れる意向だとした。

2021年6月27日に次回の協議がおこなわれ、早ければそのときにも和解が成立する見通しとなった。

事件の経過

当該生徒は2011年9月1日早朝に自宅からいなくなり、九州新幹線の線路内で遺体で発見された。自宅近くの新幹線跨線橋から飛び込み、同日早朝に現場を通過した列車にはねられたとみられる。当日は2学期の始業式だった。

遺族側が同級生などへの独自調査をおこなうと、当該生徒は所属していた吹奏楽部でいじめを受けていた疑いが浮上した。悪口を言われていた、部活動で使用している持ち物がなくなったなどのことがあったという。

一方で出水市教育委員会は事案発生直後から一貫していじめを認めてこなかった。直後に全校生徒へのいじめ調査を実施したものの、調査結果は非公開とした。その一方で「アンケート調査では、遺族側が指摘した内容があった」と受け取れるような言及もあったとされる。

この事件では、遺族や支援者らがいじめアンケートの開示を求めたものの、市教委は拒否した。市議会では、遺族側や支援者が情報開示や調査委員会設置などを求める陳情をおこなった。一部の市議は、情報開示・調査の実施や関連陳情の可決を求める質疑をおこなった。しかし大半の市議が反対し、関連陳情を否決した。

さらに、生徒が通っていた学校の「保護者及びOB有志一同」「吹奏楽部保護者及びOB有志一同」の名義ながらも署名主宰の責任者の氏名や連絡先は明記されていない形での、「いじめがあったかのようなテレビ報道」やインターネットの書き込みから「二次被害を防ぐ」などとした署名が地域で集められたともされている。

遺族側は、アンケート内容の開示を求める訴訟を2014年に起こした。2015年12月に鹿児島地裁で、記入者の個人情報特定につながる部分を除いた開示を命じる判決が出され、その後確定した。それを受けて2016年にアンケート内容が開示された。

アンケート内容には、当該生徒がいじめを受けていたと疑わせる記述が複数あったという。遺族側は出水市に再調査を求めたが拒否され、2017年5月23日付で約1200万円の損害賠償を求めて鹿児島地裁に提訴した。

雑感

今回和解に至ったのは、2017年に提訴された2度目の訴訟だということ。報道によるとこの訴訟の進行中も、市はいじめを認めない対応を繰り返したとうかがわせるような内容となっている。市側は「家庭に原因があったのではないか」などと反論するなどしたという。

報道によると、遺族側はこの間の経過について「生徒の死亡に関する事実関係を知りたい」という一心だったと報じられている。しかしこの10年近く、出水市教育委員会が誠実とはいえない対応を繰り返してきたのは、極めて遺憾なことである。

和解案の内容は必ずしも十分とはいえないような印象も受けるが、成立した場合は一区切りともなる。

事件発生後に十分な調査や対応をおこなわなかったこと。いじめを隠蔽すると受け止められてもやむを得ない対応をおこなったこと。など、出水市教育委員会のこの間の対応は再検証の必要があるのではないかとも感じる。

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