新型コロナウイルスの感染者が2020年末頃から急増に転じている。このことを受け、政府は2021年1月5日、東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県の首都圏1都3県を対象に、1月7日にも緊急事態宣言の発令を決定する方針を固めた。1月8日に発令し、1ヶ月程度の期間でおこなう方向で調整している。
萩生田光一文部科学大臣が2021年1月5日、臨時記者会見を開いた。1月16日・17日に実施予定となっている大学入学共通テストについては、緊急事態宣言が発令された場合でも予定通りに実施する方針を表明した。
また緊急事態宣言に伴う学校の休校については設置者の判断として、文部科学省としての一斉の要請はおこなわないとした。
ていねいな対応を
大学入学共通テストについては、ただでさえ、従来のセンター試験の制度を改訂してから初めての実施となっている。
新テストでは、英語では民間試験の活用する方針となったこと、国語や数学で一部に記述式設問が取り入れられること、といった問題点が指摘された。受験生や高校・予備校関係者から「英語民間試験は、家庭の経済力や居住地によって受験機会に差が出ることになり、公正ではない」「記述式では採点者の採点基準のすりあわせが困難で、不公平になる」などと強い懸念が出され、2019年に大問題となった。
この2点の課題については、当面は導入を延期し引き続き問題点を検討するとして、2021年度試験での導入は見送られている。

一応の決着をみたと思ったタイミングで、新たな問題が生じた。2020年に入ると新型コロナウイルスの問題が勃発した。受験生にとっては「春先の全国一斉臨時休校などを経て、学校の授業や受験勉強に不安を感じている」「受験会場で感染拡大しないか」「万が一試験当日、もしくは二次試験までの期間に体調を崩したとき、共通テストの再試験や、二次試験での対応などの救済策などはあるのか」など、受験に際して新たな不安の種が出たことになる。
文部科学省は「このタイミングでの試験中止は、受験生の不安と混乱を増大させることになる」と判断し、予定通り実施することにしたという。
確かにこのタイミングでの試験中止をおこなった場合、受験生にとってはダメージが大きく、実施側としても踏み切れないというのは理解できる。
実施することはやむを得ないとしても、感染防止策や万が一の場合の救済策なども含めて、できる限りの手厚い対策を取っていくことが求められている。文部科学省としてもその方針をしっかりと打ち出し、支援できる体制を取ってほしいと強く願う。