「大阪市立の高校を府立移管」大阪市で移管条例成立

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大阪市会は2020年12月9日の本会議で、大阪市立の高校21校を2022年度に大阪府に移管する条例を、大阪維新の会と公明党の賛成多数で可決した。

自民党と共産党、無所属系会派「市民とつながる・くらしが第一」は反対した。

この問題では、▼大阪市と大阪府はそれぞれ高校を設置し、普通教育中心の大阪府、実業教育など特色ある教育中心の大阪市と役割分担ができていたことで、移管の必要はない。▼高校敷地を大阪市から大阪府に無償譲渡することは、大阪市および市民の財産を侵害するものであり問題。――といったことが指摘された。

12月3日の教育こども委員会で質疑がおこなわれ、自民党と公明党が判断留保し、9日に態度表明するとしていた。

討論では自民党が、「専門家に法的な見解を問い合わせたところ、高校の敷地などを大阪市から大阪府に無償譲渡することは、地方財政法などに違反する疑いがあると指摘された」などとして、反対の意思を表明した。

また自民党や共産党から、反対討論で以下のような指摘がされた。

大阪市として特色ある教育を実施してきた歴史的な過程がある。
大阪市の廃止・特別区設置住民投票で、大阪市を大阪府に一元化することは否定されたという民意が出ているにもかかわらず、強行しているのは民意無視の暴挙。
大阪市立中高一貫校を設置する際、候補地の一つとして、廃校となった近隣の府立高校敷地を使えないかと大阪府に打診したが、大阪府から「府の財政が厳しいから有償貸与」という見解が出て断念した。大阪府の側からそういう対応をされたのに、大阪市から大阪府に無償譲渡、また財政の厳しい大阪府に高校運営を任せるのでは整合性がとれない。

一方で当初「留保」としていた公明党は、「無償譲渡する高校敷地の扱いについては、大阪市と大阪府が協議して高校教育充実のために使う」とした附帯決議を付した上で賛成する方針を出した。公明党の本会議での討論はなかった。

この問題は大阪府議会側でも審議され、府議会で関連条例が成立した場合には移管が正式決定することになる。

市立高校の府立移管は暴挙

大阪市立の高校については、実業教育を中心に、また普通科系の学校も含めて特色ある学科を設置するなど、大阪府立とは独自の方向で発展を図ってきた歴史がある。決して「二重行政」ではない。

ファッション工学、福祉、武道など、大阪市立独自の専門学科も設置されている。

商業高校は大阪府立にはなく、すべて大阪市立ないしは市立高校を設置する市の市立となっている。大阪府に移管したところで、ノウハウを持っていないことでの影響が想定される。

工業教育についても、府立工科高校は1年時はくくり募集で2年時以降専門の系に分かれる一方で、大阪市立工業高校では1年時から各学科での専門教育を実施している違いがある。

これらの大阪市での取り組みを、人的な取り組み・歴史的な面でも、また学校敷地などの財政的な面でも、乱暴に否定して大阪府に売り渡すことは、暴挙といってよい。

大阪市では2016年度、特別支援学校が大阪府に移管された。その結果、大阪市立時代と比較して、教職員の配置基準が大阪府基準に下げられて大幅に減らされた、給食が民間委託された、予算が削減され市立時代は学校経費で購入していた教材が府立移管後には家庭の費用で購入することになった、など、教育条件の低下が指摘された。

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高校でも似たようなことが起きかねない。

大阪市立の高校では図書館の専門員が配置されている。しかし府立では、橋下徹知事時代に図書館専任の職員を廃止し、司書教諭資格を持つ教員を中心に図書館の校務分掌になった教職員が通常の授業などと兼務で図書館業務にあたって、開館できない状況になるところも生まれている。

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住民よりも政局優先の対応は誤り

維新は、「大阪都構想」と称して、大阪市の持っている財産を大阪府に吸い上げ、大阪市を弱体化させ解体することを狙っている。

大阪市廃止の是非を問う住民投票では、2015年5月、2020年11月の2度にわたり否決され、大阪市は大阪市として存続する民意が示された。

しかし維新は住民投票の結果を骨抜きにし、事業の一元化などを狙い続けている。

住民投票の結果に関わりなく、高校・特別支援学校・大学、病院、公衆衛生、港湾などの分野に難癖を付け、「府市統合」を狙ってきた。

さらに2020年11月の住民投票直後には、維新は、大阪市廃止によって大阪府に移管させることを想定していた約400ともされる市の事業について、大阪市の枠組みは維持しながらも市の権限を弱体化させる形で、大阪府に「一元化」として移管させることを持ち出している。これは、住民投票で否決されたはずの内容を再び持ち出した暴挙でもある。

その際に維新は、公明党に対して、遅くとも2021年秋までには実施される次の衆議院選挙では、維新の方針に同調しない場合には小選挙区に対立候補を立てる可能性もちらつかせるような対応を取った。

大阪市政で各市議や各会派が住民要求を踏まえて市民の代表としてどのような判断をするかというのと、国政選挙での各政党の対応は、本来は全くの別次元の話である。しかしそういうことを持ち出して自分たちの意のままにしようというおかしな行為をして、大阪市政をゆがめるような恫喝をおこなうという、おかしなことになってきた。

維新の恫喝的な行為に振り回されているような形にもなっている。こんなことでいいのだろうか。