2021年度中学校教科書採択冊数公表、育鵬社は歴史8割減・公民9割減

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文部科学省は2020年11月18日、2021年度中学校教科書の採択冊数を公表した。

育鵬社教科書のシェアは激減

中学校社会科歴史的分野および公民的分野については、いずれも育鵬社のシェアが激減している。歴史は2020年度の7万2482冊(占有率6.4%)から2021年度の1万2533冊(1.1%)へと約8割減、公民は2020年度の6万1183冊(5.8%)から4287冊(0.4%)へと約9割減となった。

育鵬社教科書は、歴史認識や社会認識のとらえ方に問題があり、いわゆる極右的イデオロギーの押しつけとなっていることが問題になっていた。それだけでなく、一般的な教科書でおさえるべき内容を十分網羅していないため、必要な記述が書かれていなかったり一面的な解説・解釈に終始していることで、授業や高校受験にも支障をきたすことなどから「使いにくい教科書」とされてきた。

2020年夏の教科書採択では「育鵬社離れ」が進み、横浜市・神奈川県藤沢市・大阪市・大阪府東大阪市などとりわけ懸念されていた地区も含めて、多くの地域で育鵬社から他社に採択変更となるケースが相次いだ。また新規採択の危険性が懸念された名古屋市でも、最終的には阻止することができた。

横浜市教科書採択:歴史・公民ともに育鵬社を退ける
横浜市教育委員会は2020年8月4日に教育委員会会議を開き、中学校での教科書採択を実施した。 懸念となっていた社会科については、歴史では帝国書院、公民では東京書籍を採択した。同市で2009年度以降採択されてきた、育鵬社など極右系教科書...
名古屋市、育鵬社教科書を不採択
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大阪市教科書採択、歴史・公民ともに育鵬社教科書を一掃
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これらの結果、歴史は8割減、公民は9割減となっている。育鵬社を大きく減らせたことは、これまでの20年来の粘り強い取り組みの成果でもあり、快挙といってよいだろう。

一方で他社の教科書も、ここ20年の記述変化を経年で比較すれば「右傾化」しているのではないかという指摘もあり、その点は気がかりなところではある。

社会科歴史・公民全体でのシェア:東書・帝国・教出の3社で9割弱

全体としてみれば、歴史のシェアの順位は、東京書籍(60万6365冊、52.5%)・帝国書院(29万663冊、25.2%)・教育出版(13万1657冊、11.4%)の順となっている。

産経新聞2020年11月18日付(ウェブ版)の記事では、同紙が目の敵にしていた山川出版社と学び舎のシェアにも触れている。高校日本史・世界史教科書では全体の半数以上の安定したシェアをとっているものの中学校歴史教科書には新規参入となった山川出版社は1万9708冊(1.7%)、学び舎は5269冊(0.5%)となっている。

産経新聞では山川出版社について「久々に「従軍慰安婦」の呼称を復活させた」、学び舎について「自虐色が強いともされる」と、右派的な立場からは否定的と受け取れるようなニュアンスを匂わせる説明をおこなっている。

しかし山川出版社や学び舎の教科書の採択率が低かった理由については、そういうイデオロギー的な問題ではないと考えられる。両社とも教科書の内容そのものは(山川教科書で沖縄戦「集団自決」の記述がなかったことを除けば)まとまっているという印象ではある。しかしどちらかといえば「中学校教科書としては他社より記述の難易度が高い」とも受け取れる印象で、通常の中学校での一斉授業形式を前提にすれば使いこなすのが難しいと思われて敬遠されたような印象も受ける。

公民でのシェアの順位は、東京書籍(70万879冊、63.2%)・教育出版(13万8643冊、12.5%)・帝国書院(13万5939冊、12.3%)の順となった。

歴史・公民とも東京書籍が大きなシェアを占め、帝国書院と教育出版が2番手として続く形となっている。この3社で全体の9割弱を占めていることになる。