大阪市廃止は「身近な教育行政」にはつながらない

大阪市を廃止し、現大阪市域に4つの特別区を設置することの是非を問う「大阪市廃止・特別区設置住民投票」、推進側がいうところのいわゆる「大阪都構想」では、教育委員会が各特別区ごとに設置されることで、「いじめ対策」「学力向上」などより身近な教育行政ができると推進側はいう。

しかしこの主張は極めて疑問。

4つの特別区に分けるということは、これまでの大阪市1自治体から4つの自治体になる。自治体の数に連動して教育委員会の数も増えるというだけのこと。

その一方で、大阪府市合同の「副首都推進局」が計画している、各特別区教育委員会に配置される人員は、同規模の自治体と比較しても極めて少なくなっている。

教育委員会職員は大幅に減る

大阪市廃止の場合、各特別区への教育委員会職員配置計画(出典:https://pbs.twimg.com/media/Ekgv66kVkAAj03E.jpg)

これでは「ニアイズベター」とする主張に反して、職員の業務が増え、それに連動して一つ一つの事業に目が届きにくくなってしまう。

さらに、授業研究などをおこなう部門の「大阪市教育センター」も特別区に4分割されることなどで、研究や経験などの蓄積も散逸することが懸念される。

トップダウン方式の維新の教育行政

維新はこれらの「特別区移行後のデメリット」をごまかすためなのか、教育分野に限らずあらゆる分野で、「維新がこの10年間住民サービスを向上してきた。それを自らつぶすはずがない」などと言い訳している様子。

しかしそれも違う。維新政治のもとで、教育分野では「ニアイズベター」どころかトップダウンでの施策を進めてきて、学校現場を疲弊させてきた。いわゆる「教育基本条例」をはじめとした各種施策での学校現場への締め付け、現場や地域住民の強い反対・懸念を押し切って導入した学校選択制、学校統廃合を教育委員会主導で容易にするような条例改正、学力向上策は「テスト成績」一辺倒に偏っていることで独自学力テストなどを実施して高校受験に反映させること、など。

それらの影響で、教員志望者が大阪市および大阪府の教員採用試験受験を避けて他地域に流れている、大学などで教職課程を指導する大学教員も教え子には大阪市・大阪府の教員採用試験受験を勧めない、現職教員も条件のある人は早期退職や他県・私学に流出するケースが増加しているなどの状況も報告されている。

これらのことが「住民サービス向上」と言えるのかは極めて疑問。

社会教育や保育、また医療・公衆衛生、社会福祉、都市計画など他の分野についても、この項では言及する余裕がないが、それらの他の分野でも似たような感じ。

維新の第一義的な政策は「大阪都構想」=大阪市の廃止と首長によるトップダウン体制の構築。こういう混乱が生じるのも必然だし、大阪市廃止が実現してしまった場合は混乱がより深刻になってしまうことにもなる。

表向きの「看板」と異なり、実際にやっていることはちぐはぐで、しかも深刻な結果をもたらしかねないものとなっている。

特別区移行で予想されるデメリット

特別区に移行した場合、ただでさえ維新によって悪化させられた条件が、財源不足などによってより深刻な形にさせられる危険性もある。

特別区への移行では、移行の初期コスト・ランニングコストから、最初から財源的に厳しい状況で出発することが見込まれている。そのため、トップダウン志向の気質と相まって、今の水準よりもより下げられる危険性が出ている。

やはり、大阪市廃止・特別区設置には、メリットは見当たらない。