大阪市廃止で図書館にも影響が出る可能性

大阪市廃止・特別区設置の住民投票に関連して、大阪市立図書館の扱いも問題になっている。

産経新聞2020年10月16日が、「ファクトチェック」と題して「市立図書館廃止は誤り」とする記事を出している。

【大阪都構想ファクトチェック】「都構想で図書館廃止」は誤り
11月1日に投開票される大阪都構想の住民投票に関し、「都構想になれば図書館などが廃止されるようだ」との臆測がツイッター上で広がっている。投稿は賛否の意見とともに…

しかし記事では、前提条件を狭く取り過ぎているという印象。

仮に大阪市が廃止された場合、そもそも大阪市がなくなるから「市立」図書館は必然的になくなるというのもあるが、それは抜きにしても、大阪市廃止後は特別区に移管されて特別区立図書館となる計画となっている。特別区移行に伴って、運営体制が不透明・不安定となるものであり、「現時点で具体的に廃止が決まったわけではないが、廃止検討につながりかねない状況が生まれ、誤りと断言することは難しい」といったほうがよいというものである。

図書館を「二重行政」呼ばわり

大阪維新の会は大阪市廃止を目指す刊行物で、「二重行政の無駄」のひとつとして、「大阪府立図書館と大阪市立図書館」をあげた。

そもそも、病院・学校・図書館など同種・類似の施設が大阪府営と大阪市営で並立しているのは、相互補完体制や細かい得意分野・専門分野での棲み分けなど、必要があって設置された場合が多い。

維新がいうところの「二重行政」で、大阪府民や大阪市民が不利益を受けているケースなど、いくら探しても全く心当たりはないし、維新の側からもそういった具体例が示されたことはない。また他県では維新のいうような「二重行政」が問題になったとは聞いたことがなく、大阪で維新が言い立てているだけの「虚構」だと言っていい。

大型の「ハコ物」については、二重行政が原因ではなく、かつての大阪府・大阪市それぞれがバブル期に乱開発計画をおこなったことと、その後遺症が主原因だとされている。

特別区移行後の住民サービス保障の体制はない

大阪市廃止・特別区設置にあたって、市民プールなど大阪市の公共施設の統廃合を前提とした財政シミュレーションが組まれていることも明らかになっている。一方で、市立図書館については統廃合対象の施設には入っていないとされる。

だからといって「特別区移行後に廃止されない」という保障はどこにもない。

そもそも大阪市廃止・特別区設置にあたっての「協定書」では、特別区移行後の住民サービスについては「維持に努める」としているだけ。

維新の側はその不都合な内容を隠し、「住民サービスは向上する」と協定書の内容を逸脱した宣伝をおこなっている。

しかし周辺状況を検討すると、「向上」どころか「現状維持」すら危ういものとなっている。

大阪市が持っている財源がそのまま特別区に移行するわけではなく、大阪府に吸い上げられてから分配されることになる。また特別区移行に伴う初期費用もかかる。少ない財源の中で初期費用とランニングコストをかけることから、財源的にも厳しい状態で出発すると見込まれている。

そのため、あらゆる住民サービスについて見直しが迫られる可能性が出てくる。

図書館運営で予想される体制

大阪市立図書館については、現行では各行政区ごとに24図書館の体制となっている。大阪市立中央図書館をセンターとし、23の地域図書館(分館)を設置している。事務等の共通化できる部分については中央図書館で集約しておこなう体制となっている。

大阪市廃止の場合、24図書館は所在地の特別区にそれぞれ移行される構想となっている。

中央図書館は特別区「中央区」に移ることになるが、現行の大阪市立図書館の構成上、中央図書館の蔵書が他図書館と比較して飛び抜けて多いことなどから、特別区「中央区」の財源を圧迫して運営体制に支障が出るおそれが指摘されている。ほかの特別区についても、各図書館の運営体制の再構築などの必要に迫られる。

特別区自体が財政難であることなどからも、事業見直しの対象となりかねない。

結果的に「廃止につながる可能性」

これらのことを総合すると、大阪市が廃止された場合、特別区移行の瞬間は存続しても、特別区移行後に再編・統廃合・廃止対象になる可能性が高まるということになる。