安倍政権、のべ9年弱での「教育改革」

安倍晋三首相が退任を表明した。2020年9月中にも国会が召集され、新首相が指名される見通しとなっている。

安倍政権では教育の問題についても大きな変化があった。

2006年9月26日~2007年9月26日の第一次安倍政権では、教育基本法の「改正」、教員免許更新制の導入など「教育改革関連三法」の成立、「徳育」教科化の方針を打ち出すなどがおこなわれた。

安倍氏は一度首相を退任したのち再び首相になり、2012年12月26日より続く第二次安倍政権となっている。第二次政権では、第一次政権で方針が出された「道徳の教科化」を実現した。また教科書検定についても、政府の意向が強まるような制度へと変化した。領土問題や憲法・自衛隊など国民的・学問的に見解が大きく分かれるものでは、政府見解に沿った記述を書くよう求められるなどした。さらに教育委員会制度を「改正」し、首長の意向を反映しやすくするなどもした。

安倍政権ではいわゆる右派的・国家主義的なイデオロギー色を強め、政治による教育への干渉が強まった形にもなった。

2017年2月に発覚した森友学園事件も、安倍首相が直接関与したかどうかはともかくとして、安倍政権の姿勢も一因となって発生した問題となっている。第一次安倍政権で教育基本法「改正」が実現したことで、かねてから教育勅語をベースとした復古的な教育をおこなう私立小学校を作りたいと考えていた大阪府内の私立幼稚園理事長(当時)・籠池泰典氏が、自分の理想の学校を作る好機が来たとして、小学校設置構想を具体化させて大阪府に働きかけたことが発端となっている。

橋下徹知事(当時)の規制緩和方針や、大阪維新の会関係者の中で主流となっている復古主義的な思想、維新と安倍政権が近いことなどが絡み合い、通常なら「資金面や、自前の校地を確保していないことなどで、大阪府の設置基準を満たさない」として認可されなかったはずの学校設置認可が下りた。さらには「地元自治体が防災公園として、また別の大学が校地の拡張用地として、それぞれ購入したいと交渉していたが、国から提示された価格が高すぎて断念した」という国有地を、大阪府での学校設置認可を前提にして異例の安価で払い下げる方針まで決まったというところまでいった。しかし国有地売却額が「非公開」になっていた異変に気付いた地元市議・住民団体が情報開示訴訟を起こし、また新聞社がスクープ報道をするなどして、一連の問題が発覚した。

一方で、第一次政権では国家主義的な色が前面に出ていたものの、第二次政権後半では経済政策のための「見せかけ」の要素が強まったという指摘もされている。

大学入学共通テストを導入し、「英語での民間試験の活用」や「記述式の導入」方針なども問題になった。安倍政権では「教育無償化」方針を打ち出したが、制度設計が十分ではないとも指摘されている。

第一次政権の1年と、第二次政権での7年9ヶ月弱で、教育現場や教育施策に大きな影響が出た。問題点をていねいに検証した上で、子どもや学校現場にとってよりよい教育施策・教育行政になるような手立てを引き続き考えていく必要がある。

(参考)
◎朝日新聞『教育は「経済再生の道具」になった 変容した安倍政治』(2020年9月11日)

教育は「経済再生の道具」になった 変容した安倍政治:朝日新聞デジタル
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