大阪市立の高校「大阪府立への移管」案、大阪府側で審議

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大阪府教育委員会は2020年8月31日に教育委員会会議を開き、大阪市立の高校を府立に移管することについての移管計画案を審議した。

移管時の名称をどうするかで疑問があがっていた「大阪市立高等学校」については、通称の「市立(いちりつ)」をひらがな表記する形で、「大阪府立いちりつ高等学校」(仮称)の校名案を出した。

移管計画案は大阪府議会の2020年9月議会に関連条例案を提出し、審議されることになっている。可決された場合、大阪市立の22高校(2022年度開校予定の1校含む)全校が2022年度より大阪府に移管されることになる。

そもそも移管自体に無理がある

大阪市立の高校を府立に移管することについては、学校関係者からの要望から出発したものではない。大阪市を廃止・解体するとした大阪維新の策動、いわゆる「大阪都構想」により、「大阪府と大阪市で類似施設をそれぞれ持っているのは二重行政」と難癖を付けられたものである。

いわゆる「大阪都構想」については2015年に一度「否決=大阪市存続」で決着が付いたにもかかわらず、2020年11月にも2度目の住民投票が強行される見通しで、再び否決することが必須となっている。

しかし高校については、「都構想」の動向とは別に、維新の府政・市政により府立移管を強行されることとなった。

歴史的には、大阪府立と大阪市立の高校がそれぞれあっても、何も支障がなかった。

1900年に大阪市内の中等教育について、府が普通教育中心、大阪市が実業教育中心とする取り決め・棲み分けがなされ、旧制学校はそのような形で設置されてきた経緯がある。もっとも時代の変化に伴い、入試難緩和目的などで大阪市も旧制中学校や高等女学校を設置したり、府立学校でも実業科目も開講する、などの柔軟な措置がとられてきた。

1948年の学制改革で旧制中学校・高等女学校・職業学校などが新制高校に移行した際、府立と大阪市立の高校が並立する形となった。大阪府立は平均的な普通科高校中心の一方、大阪市立は職業学科や専門学科中心で特色的・個性的な教育を図るという方向性での特色化の方向に舵を切ることになった。

高校入試に関することなど生徒に影響がある事項については、大阪府と市の各教育委員会の協議により統一して実施してきたので、問題はなかった。

また大阪府では、堺市・東大阪市・岸和田市も市立高校を設置・運営している。「二重行政」うんぬんという維新の論理なら、それらの市の高校についても該当することになってしまう。しかしそれらの高校については全く言及しないまま、「大阪市立」の高校だけを「二重行政」とやり玉に挙げている。これはおかしい。

結局これは、大阪市と名前の付くものをつぶしたいといういい加減な発想の現れだとしか思えない。

さらに高校統廃合をよりしやすくするという目的もあると考えられる。大阪府では府条例により「3年連続定員割れの高校は廃校も検討」などとしている。それらが現大阪市立の高校にも適用され、より踏み込んだ学校つぶしが進みかねないことにもなる。

「大阪市立高校」について

大阪市立の高校は21校設置されているが、そのうちの1校は地名等の名称が入っていない「大阪市立高等学校」という校名である。

これは、旧制学校時代、大阪市立としては最初かつ当時唯一の旧制中学校・大阪市立中学校として開校した経緯によるものである。7年制旧制高等学校への改編を見越して、校地は大阪市内にこだわらずに郊外設置も視野に入れるとした結果、現在の枚方市に校舎を構えることになった。しかし戦時体制や戦後の学制改革により、旧制高等学校改編は幻となった。

1948年の学制改革により、大阪市立の旧制中等教育学校が新制高校に移行した際、高等女学校・商業学校・工業学校から移行したほかの市立学校との区別のために名称を付ける必要がでた。「枚方」「桜ヶ丘」などの校名案が出たものの、結果的に固有名詞の入らない「大阪市立高等学校」で届けられて定着した経緯がある。正式には「大阪しりつ高等学校」と読むが、通称・略称は「いちりつ」で定着した。

1978年には大阪市が大阪府に対して、大阪市立高校が枚方市にあることなどを理由に、同校を府に譲渡したいと持ちかけた。しかし学校関係者の強い反対により白紙撤回されている。

いわゆる「大阪都構想」に絡んで府立移管が再浮上した際、単純に「大阪市立」の部分を「大阪府立」と置き換えるわけにいかない大阪市立高校の名称についても再び俎上に上がることになった。

松井一郎大阪市長などは府立移管計画が再浮上した当時、「大阪府立大阪市立高校」でもすればどうかなどと述べていた。今回発表された案は、結果的にそれに近いような形となっている。

府立移管自体が、歴史的な経緯からみてもありえないことである。それを無理やり府立に移管しようとしたことで、特定の学校の名称についても齟齬が出たことにもなる。

つじつま合わせ感が拭えない

そもそも府立移管自体に道理がない。そこに「大阪市立高校」の移管後の校名問題まで加わり、とってつけたような名称でつじつま合わせを図ったとしか思えない状態になっている。

このようなとってつけたいい加減な内容で、歴史や文化を壊していくのが維新であり「大阪都構想」であるという悲しさを感じる。