愛媛県教育委員会は2020年8月19日、2021年度から県立学校で使用する教科書の採択を実施した。
県立中等教育学校前期課程・特別支援学校中等部での社会科の歴史的分野および公民的分野については、これまで使用されていた育鵬社は採択されず、歴史は東京書籍、公民は日本文教出版を採択した。
愛媛県では2001年に養護学校・聾学校の一部で当時の「新しい歴史教科書をつくる会」の扶桑社版歴史教科書が採択された。当時の加戸守行愛媛県知事が2001年教科書採択の直前「待望していた教科書。この教科書がベスト」などと発言し、波紋を呼んでいた。
さらに2002年には、県立中高一貫校(現在は中等教育学校に改組)でも扶桑社版が採択された。公立校での扶桑社採択は、当時全国で初めてだったという。
以降2005年・2009年採択でも扶桑社版が採択されたのち、2011年採択では当時の扶桑社教科書の流れを汲む育鵬社の歴史・公民が採択された。2015年・19年にも同様に育鵬社が採択された。
愛媛県では足かけ20年近く極右系の中学校教科書を採択し続けてきたことになるが、今回一掃したことになる。一掃が実現したことは喜ばしい。
高校教科書採択
一方で同日の教育委員会会議では、県立高校・中等教育学校後期課程の教科書採択もおこなわれた。日本史科目では明成社「最新日本史」の継続使用を希望した学校が11校あり、いずれも学校希望の追認の形で採択が決まったということ。
明成社は一般にはそれほど知られていないが、内容的にはごく簡単に言えば「育鵬社の高校教科書版」のようなものである。極右的な歴史観に基づく記述で構成され、歴史認識としては問題がある。
学校採択の高校では、日本史科目については山川出版社のシェアが圧倒的に高く、次いで東京書籍や実教出版なども一部あるという状況になり、明成社は全国的にもほとんど採択されていない。
一方で愛媛県では県立高校49校のうち11校、比率としては約4分の1近くで明成社が採択されているという状況になっている。この点については危惧するものである。