朝日新聞2020年7月25日に、「日本会議神奈川」幹部のインタビューが掲載されている。
教科書採択について、育鵬社など極右的な教科書を採択させるため、教育委員会での審議手続きを変更させた経過について語っている。
右派系団体の働きかけ
インタビューによると、1997年に結成された「新しい歴史教科書をつくる会」(その後内部分裂で、当時の反執行部派は日本会議が背後にいる「日本教育再生機構」として育鵬社から教科書を発行)は、2000年頃から行政への働きかけを強めるようになった。
神奈川県内では、学校の希望をとりまとめた「学校票」の廃止、学校現場や教科書検討審議会で評価が高かった上位教科書を採択候補として提示する「絞り込み」の廃止、横浜市での採択地区の全市1区化、横浜市や鎌倉市での教育委員の無記名投票導入などを働きかけ実現させたとしている。
それらの措置は、当時の「つくる会」や関連団体・日本会議などが主導して請願・陳情・要望を繰り返したとしている。
インタビューで当事者の口から語られると、生々しいものがある。
いずれも、教科書採択の過程を不透明にさせ、政治的意向を介入させる余地を広げた要因として、悪評が高い措置である。
右派的な要望活動の繰り返しによって、学校現場の教育的な見地からの判断よりも、教育委員の個人的な思想信条・政治的意向を強く反映させるような状況を作ったことにもなっている。
入学式・卒業式での監視・密告活動も
またインタビューでは、学校での日の丸・君が代の徹底を求めた活動についても言及している。
地域住民として入学式・卒業式に出席して、舞台の真ん中に日の丸を掲げているかどうか、「君が代」伴奏がピアノかテープか・教員が口を開けて斉唱しているかどうかなどを細かくチェックして教育委員会に報告する活動もおこなっていたとも触れている。
教育の自主性を否定的に扱い、学校現場への管理・監視と統制を求める姿勢は、教科書問題にしても「日の丸・君が代」にしても共通の発想となっている。
ボトムアップでの判断を
教科書問題にしても、その他の教育問題全般にしても、上からの押しつけではなく、現場の意向を反映したボトムアップこそが必要である。
上からの押しつけを求めるような仕組みに変えようとする策動は、言い換えれば、そうでもしなければ採択されないからということにもなる。
政治的・イデオロギー押しつけ的なきな臭い動きの巻き添えになるのは本意ではないが、現場の意向を反映した教科書採択にするためには、教育委員会の動きのチェックや世論の醸成で対抗していくことも必要になってくると考えられる。
前回育鵬社が採択された地域でも、そうではなかった地域でも、教育委員会の審議動向を注視し、おかしな教科書を押しつけられることがないようにしていきたい。