2020年教科書採択:大阪府での気がかりな点

2020年の中学校教科書採択では全国的に動向が目を離せないが、とりわけ大阪府は気がかりな点が多い地域の一つである。

前回の2015年採択の際、大阪府内の自治体で育鵬社の社会科歴史・公民教科書が採択されるケースが目立った。2015年は、大阪市・東大阪市・四條畷市・河内長野市・泉佐野市の5採択地区で育鵬社教科書が採択された(東大阪市と河内長野市は公民のみ、大阪市・四條畷市・泉佐野市は歴史・公民の両方)。

2015年教科書採択の際、大阪府に本社を置く住宅販売会社「フジ住宅」が従業員を動員し、各地の教科書展示会に赴かせて育鵬社教科書を採択するよう求めるアンケート回答を書くよう指示していたなどの問題が明らかになった。当該住宅会社の会長は育鵬社教科書の母体の「日本教育再生機構」と強いつながりをもち、他にも従業員に対して民族差別的な内容の社内報を回覧させるなどの問題が指摘されていた。この「ヘイトハラスメント」訴訟では、教科書展示会動員を違法と認める判決が2020年7月に出たものの、会社側は即日控訴した。

教育再生首長会議

安倍首相の教育政策に賛同する首長らでつくる「教育再生首長会議」との関係についても見逃せない。この首長会議は、育鵬社教科書母体の「日本教育再生機構」に事務局を委託し、育鵬社教科書を推すような動きをしてきたことも指摘されている。

大阪府内の首長では、東大阪市長が同会議の会長となっている。枚方市・泉大津市・門真市の市長が2019年度に同会に新たに加入したとも指摘されている。このほか、泉佐野市・和泉市・貝塚市の市長も会員になっている。

維新系首長

大阪府独自の事情として、維新系首長との関係も見逃せない。

維新は教育全般に対して、政治的な干渉・介入を繰り返している。

教科書採択では、維新が育鵬社など「ふさわしい教科書」を求めて教育委員会に申し入れるなどの行為を過去におこなったことがある。また統一地方選挙の政策として「教科書採択の適正化」を掲げたこともある。

その一方で、大阪市で起きた、フジ住宅が関係していると思われる「2015年教科書採択に置ける、教科書展示会でのアンケート不正問題(大阪市の側は、同一文面・酷似筆跡の回答が大量にあることに気づきながら、集計責任者の指示でそのまま集計し、育鵬社支持が7割というアンケート結果を教育委員会会議に提出した)」については、市会では他会派が真相解明を求める中、維新は一言も発言しないまま陳情採択などに反対し続けた。

大阪府内では、大阪府・大阪市・堺市・岸和田市・門真市・守口市・枚方市・八尾市・柏原市などに維新系の首長がいる。

このほか、組織的には維新所属ではないものの、維新と友好的ともみられている首長も複数いる。

大阪府内で2015年に育鵬社教科書を採択した自治体は、当時の首長が維新系、ないしは維新に友好的とみられていたケースが多くなっている。

動向には要注意

ヘイトハラスメント訴訟で、育鵬社を支持する側のなりふり構わない行為が違法と指摘されたという面はあるとはいえども、これまでの経緯から引き続き予断を許さないことになっている。

前回育鵬社が採択された地域、教育再生会議参加の首長がいる地域、維新系の首長のいる地域を中心に、動向には注意を払っていく必要がある。