大阪市生野区の学校統廃合問題・「3密」も指摘

「しんぶん赤旗」が2020年6月27日付・28日付の2回に分けて、「大阪市の学校“3密”」とする取材記事を掲載している。

大阪市生野区での小学校統廃合問題について、新型コロナウイルス問題が表面化したもとでも統廃合を強行している、これは「3密」にも逆行するという視点から特集を組んでいる。

生野区の学校統廃合問題

大阪市では2012年、当時の大阪市長・橋下徹が、市立小学校(約300校)を3分の2程度に減らす構想を打ち出した。それを受けて生野区では、「小規模校化が進行している」として、具体的な校名をあげて区の西半分にあたる小学校12校と中学校5校を、4小学校・4中学校に再編する計画を2016年に発表した。

しかし「通学距離が長くなることでの安全面」「まちづくりの問題」など、地域からの疑問や反発の声は根強く、計画通りのスケジュールでは進まなかった。

維新市議が2019年10月、市会で「統廃合のたびに陳情が上がるのは課題。市会で個別に判断するものではない」などと、生野区での統廃合問題への反対の声や市会にあげられた陳情を批判した。

大阪市学校統廃合計画に対象地域からの疑問多数
大阪市会は10月2日の教育こども委員会で、『「生野区西部地域学校再編整備計画(案)」を「統廃合ありき」ですすめるのではなく、市議会の質疑、区政会議の議論にもとづき、いったん立ち止まることを求める陳情書』を審議した。 大阪市生野区では、...

維新市議の質疑が引き金になったとみられ、大阪市では2020年2月、小規模校の統廃合には地域住民の合意を必要とせず市教委が統廃合計画を策定するとした条例改正を、維新と公明党の賛成で可決した。

小学校統廃合「行政主導で進める」条例、維新・公明賛成で可決:大阪市
大阪市で小規模校の統廃合を行政主導で進めることを条例で明記した「大阪市立学校活性化条例の一部を改正する条例案」は、2020年2月21日の大阪市会本会議で、大阪維新の会と公明党の賛成で可決・成立した。2020年4月1日からの施行となる。 ...

そして2020年には、新型コロナウイルス問題が大きな問題となる。緊急事態宣言が発令され外出自粛や休業などが呼びかけられるもと、大阪市は2020年4月、地域や保護者に知らせず、施工業者などを記した法令上必要な標識も掲示せず、統合校設置予定の小学校で「統合時の児童生徒受け入れに備えた校舎増築工事」を開始した。

大阪市の小学校統廃合、新型コロナウイルス禍で工事始まる(幸田泉) - Yahoo!ニュース
大規模な学校統廃合計画に揺れる大阪市生野区西部地域。新型コロナウイルス禍で休校中の小学校で、統廃合に向けた工事がスタートした。統廃合に反対している地元住民からは「火事場泥棒」の声が上る。

また新型コロナウイルス問題とも関連して、地域住民らは小規模校では「密」になりにくいというメリットを指摘し、統廃合計画を見直すよう求める陳情をおこなった。

大阪市でも学校再開の際に分散登校がおこなわれたが、小規模校では分散登校の必要がなかったと指摘された。

少人数学級のメリット

記事では、生野区の統廃合対象になっている小学校に通う保護者からの声が紹介されている。

この小学校では、学年の児童が40人だという。「2年生以下は35人学級、3年生以上は40人学級」という大阪市の学級編成基準に従い、1・2年時は2学級でクラスは各20人程度だった。しかし3年に進級した際、全学年の児童が1学級に詰め込まれることになった。そのことで授業中の私語など児童が落ち着きをなくす状況が生まれ、教師も疲弊している状況になってしまったという。

当該校では保護者らが2学級に戻すよう求める署名を集め、2020年2月に市会に提出した。

新型コロナ問題での緊急事態宣言解除後、学校再開の際に「3密」対策で一時的に学級が2分割されると、子どもの様子が目に見えて落ち着くようになったと指摘されている。

背景には国の政策も

記事では、大阪市の学校統廃合の背景に国の政策があるとも指摘している。安倍政権が「地方創生」名目で自治体に所有施設の延べ床面積削減を求めていること、2015年には小中学校の適正規模・適正規模に関する指針を「1校あたり12~18学級」として小規模校の統廃合検討を求めたことなどを指摘した。さらに小規模校は「クラス替えができないこと、切磋琢磨できないことでの人間関係の固定化」などのデメリットがあるとしている。

これに対して、「文科省の標準学級数は財政効率の観点から出てきたもので、教育学的な根拠はない」「統廃合の根拠とされる『切磋琢磨』などについては『俗説』にすぎない」と批判する、専門家の見解を紹介している。

大阪市では、文科省の基準を踏まえて独自に変更する形で、小中学校の適正規模を「12~24学級」とし、小規模校はデメリットがあるとしている。

強引な統廃合の中止と、少人数学級の実現を

記事では生野区の小学校統廃合をめぐる経過について紹介し、強引な統廃合の中止と、少人数学級の実現をと訴えている。

学校の統廃合については、場合によっては検討することになるケースもありうることまでは否定できない。しかしそれは学校・地域の状況や関係者の合意などを踏まえて、個別に判断すべきことである。

「40人学級が1学年2クラス以上」という、多すぎる標準学級数や学級定数の現行基準を踏まえて、それから下回ると機械的に統廃合を実施する、さらには地域住民からの懸念を押し切って強引におこなう、という手法がふさわしいとは思えない。

またそもそも、40人学級自体が多すぎる、児童生徒の状況に影響を与える、さらには新型コロナとの関連でも物理的に「密」を避けられないという観点も踏まえれば、現行の基準を機械的に当てはめた統廃合はなじまない。

「教員増員・少人数学級を」衆院予算委員会で取り上げられる
2020年6月10日の衆議院予算委員会では、質問に立った各議員が、新型コロナウイルスへの対応についても取り上げた。 各議員が取り上げた内容は家計支援・中小企業支援・保健所など各分野にわたっているが、日本共産党の志位和夫委員長・衆議院議...

行政としての標準学級数や学級定数の現行基準をそのまま前提とせず、基準を引き下げていくことも必要になってくる。