川崎市立高校教科書採択訴訟、控訴審で一審判決維持

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川崎市立高校での教科書採択をめぐり、「会議の録音データ開示を拒否した上、その後にデータを消去したのは違法」として市民が川崎市を相手取って提訴していた訴訟で、東京高裁は2020年6月24日、一部の行為について市の違法性を認め11万円の損害賠償を命じた一審横浜地裁川崎支部判決(2019年10月24日)を維持し、原告側の控訴を棄却した。

事件の経過

この問題は、2014年8月に実施された、川崎市立高校での教科書採択をめぐるものである。

この年の教科書採択では、地理歴史科「日本史A」科目について、市立高校2校が実教出版教科書の採択を希望した。しかし川崎市教育委員会は学校側の希望を保留し、「再考」を求める異例の行為をおこなった。公立高校での教科書採択については、学校側が希望した教科書候補をそのまま追認するのが通例となっているが、市教委の対応は極めて異例の措置となった。結局当該校では別の教科書を採択候補として提出し直し、次の教育委員会では別の教科書が採択された。

当時発行されていた実教出版の日本史教科書では、国旗・国歌法に関する説明で、「一部の自治体で公務員への強制の動きがある」という注釈を付けていた。しかしこの記述に、一部の自治体・教育委員会や、右派といわれる政治家が反発し、教育委員会が学校に当該教科書を使用しないように圧力をかける、右派政治家が実教出版教科書を採択した学校の校長を議会に呼び出す・実教出版教科書を名指しして採択するなと要請をおこなうなど、当該教科書を採択から排除しろと迫る動きが全国的に広がっていた。

一審では、市職員が「録音データを消去した」と虚偽説明をおこなったことで、川崎市情報公開・個人情報保護審査会の答申に影響を及ぼしたこと、また原告が審査会での適正な審理を受ける権利を侵害したとして、その部分のみ市に賠償を命じた。一方で、「録音データは非開示情報にあたる」とした川崎市の主張を認め、非開示に違法性はないと判断した。

認定されなかった部分を不服として、原告側が控訴していた。

教科書採択をめぐるやりとりが「非開示情報」にあたるとは、正直言って考えにくい。しかも、通常ではありえないような「学校からの希望をそのまま受理せず保留する」という極めて異例の決定をおこなったことについては、ていねいな説明と検証の過程が必要だったのでは中と考えられる。

法的には残念な判断にはなったが、これでいいのだろうかという印象を受ける。

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