大阪市立中学校では2020年6月1日~12日の分散登校期間中、パン1個と牛乳の簡易給食を提供している。
しかし生徒からは「量が少ない」と不満がでて、自宅で昼食をとる生徒が増えて給食の廃棄が増える問題が出た。このことを受けて大阪市教育委員会では2020年6月4日、簡易給食提供期間中の特例として、パンの持ち帰りを認める措置をとることにした。
給食の持ち帰りについては、近年では衛生面での問題を不安視し、持ち帰りを禁止する傾向が全国的に出ていた。一方でフードロスなどの問題も無視できず、特例として認めたことになる。
給食の再開自体は、適切な状況のもとで実施される条件があるという一般論の意味では否定しない。しかし大阪市の場合は、松井一郎市長が現場との調整をせずに独断で「再開」を発表したことで、不要な混乱を生む形になっていた。


分散登校では1クラスを2つ以上に分割し、午前と午後にそれぞれ登校させることになる。午前登校の生徒は授業終了後給食を食べてから下校、午後登校の生徒は昼に登校後給食を食べてから授業に臨む形になる。
しかし1クラスを2つに分けていることから、同じ時間帯に給食をおこなうと教室が足りなくなる状況も生まれる。空き教室をフル活用すれば全児童生徒を収容でき同時間帯にできる条件があったとしても、食缶が足りなくなる状況もありうる。教室や食缶の問題をクリアできる条件があっても、指導にあたる教員も2教室を行き来するなどの状態になる。また午前グループと午後グループの給食時間をずらすと、各グループでの給食の準備・後片付けや、児童・生徒の入れ替えに時間がかかり、これも多大な負担になるということになる。
給食の運用については、現場から不安視する声が出ていた。
そして松井市長の意向、というか思いつきに押し切られるような形で、小学校は通常よりおかずを1品減らした状態で、中学校はパン1個と牛乳の簡易給食の形で、給食が実施されることになった。
現場が工夫を凝らしても、元の方針自体に無理があったことで、しわ寄せは教職員だけでなく生徒にも押し寄せることになった。パン1個と牛乳だけでは、育ち盛りの中学生にはとても足りない量。午後からの授業の生徒は空腹で辛い状態になる可能性もあるし、午前中で帰宅する生徒も帰宅後に食べ直すような形にもなりうる。
案の定というか、自宅で食べてきてから登校する生徒も続出する形になった。
政治家の一方的な思いつきによって、子どもたちに不要な負担をかけるような状況に陥らせてしまったことは、とうてい許容できるようなことではない。そして政治家の後始末・尻拭いは現場任せというのも、おかしなことである。