9月入学、その問題点

新型コロナウイルス問題が深刻化し、学校の休校長期化も考えられる状況になったことで突然俎上に上がった「9月入学」への移行案。

賛成論者によると、9月から授業を再開してそのまま学年末も7月にずらすことで、授業時間の負担も従来通りになる、世界的な流れにもあわせられるなどという。

移行に伴う混乱や問題点が予想されることなどを考えると、長期間かけて問題を一つ一つ検証してから移行の是非を判断し、仮に移行の方向でまとまっても慎重な問題解決を続けたうえで実施するということになるべきである。新型コロナ問題のどさくさに紛れてすぐにおこなうような簡単な作業ではない。

「コロナによって授業再開が遅れることで、いい機会だからずらせばいい」という安易な発想で強行したら混乱を招きかねない。

2021年度小学校1年の学年編成が「1年半の月齢差の児童が同じ学年になる」可能性もあること、在校生が半年卒業時期が延びることで学費や生活費が余計にかかること、保育所年長組が半年保育園児を続けることになることで待機児童問題の悪化も考えられること、入学試験や就職試験などとの関係、その他どう解決するのかという課題が山積みとなってくる。

「9月入学」への移行については、一般的な研究をすることまでは否定しないが、現時点では具体的に移行するという方向での検討をする段階ではないと感じる。

研究者も危惧

教育研究者で作る「日本教育学会」は2020年5月11日、「時間をかけた丁寧な社会的論議が必要であると考え、政府に対して拙速な導入を決定しないよう求める」との声明を発表した。

日本教育学会声明 2020年5月11日 «日本教育学会
9月入学に日本教育学会「問題多い」 吉村知事らを批判:朝日新聞デジタル
 新型コロナウイルスの感染拡大による休校が長引く中、政府が検討を始めた「9月入学・始業」について、3千人近い研究者らでつくる日本教育学会(広田照幸会長)は11日、「時間をかけた丁寧な社会的論議が必要で…

声明と、それを受けた記者会見では、新型コロナ問題を受けた性急な「9月入学」導入には問題があると指摘した。

義務教育開始年齢が世界的にみて一番遅くなること、4月~8月の学費支払いの問題、就職の時期の問題などを指摘している。

吉村洋文大阪府知事や小池百合子東京都知事が「学校再開の後ろ倒しによる9月入学導入」を歓迎し、安倍晋三首相も「前広に検討」と言及したことなど、政治的な動きについては、「はっきり言って、教育の制度も実態もあまりご存じない方がメリットだけを注目して議論されている」と強く批判したとされる。

休校が長引くことによる学業の遅れなどの不安については生徒や教職員の声に真摯に耳を傾けるとし、オンライン授業の活用、学習指導要領を特例的にスリム化すること、大学入試では「大学入学共通テスト」で高校2年までの範囲に重点を置くことなどの案を提示している。

日本教育学会の声明で指摘された内容については、全く同意である。危惧される点を一つ一つていねいに検討する必要がある。新型コロナウイルス問題でのどさくさに紛れて、政治的な思惑で一方的にごり押しするようなものではない。