大阪市が設置した第三者委員会は2020年3月26日、大阪市立中学校1年だった男子生徒が2018年1月に自殺した案件についての調査報告書を公表した。
いじめの経過
当該生徒は2018年1月27日未明、自宅マンションから転落して死亡した。状況からは自殺を図った可能性が高いとみられている。
第三者委員会の調査によると、同じクラスの生徒や部活動の上級生が当該生徒に対して、▼「チビ」「メガネ」などと声をかける。▼悪口を言う。▼筆箱を取り上げられ、別の生徒数名がキャッチボールのように投げ合う。▼当該校では、国語の授業で使用する国語辞典は学校に人数分保管し、授業終了後は教室の本棚に回収することになっていたが、当該生徒に回収作業を押しつける。▼かけていたメガネを奪う。▼LINEで不適切な内容の送信をおこなう。などの行為をおこなったと指摘された。これらの行為についていじめだと判断した。
第三者委員会ではこれらの一連の経過について、法的な相当因果関係の意ではないとしながらも、いじめと自殺との因果関係を認めた。
教員の対応
担任教諭が当該生徒に対して「メガネつぶしたろか」などと発言するなど、一部の教諭がこの生徒への「いじり」をおこなっていたことが指摘された。このことが、ほかの生徒に対してこの生徒を軽く扱ってもいいという風潮につながるなど、この生徒やほかの生徒への心理的影響となったとも指摘された。
また学校では有形力をともなう指導があったことなども、生徒が相談できないような心理状態に追い込んだ可能性も指摘されている。
担任教諭は、自身が担当する社会科の授業で「世界の国調べ」として、「各生徒が自由に選択した国について調べ、調査結果をまとめたものを文化祭で展示する」という取り組みをおこなった。しかし当該生徒やほかの数名の生徒については「氏名だけ」を展示していたという。担任教諭はすでに退職しており、なぜこのようなことをおこなったかについては十分に解明できないままになっているが、大阪市教委によると「このような展示に教育効果があるかは疑問。当該生徒が恥をかかされたと感じる可能性がある」と指摘している。
この生徒について「支援を必要とする」と小学校から申し送りを受けていたにもかかわらず、また中学校側でも小柄な体格などからいじめの標的になりやすいのではないかと心配されていた生徒で、また保健室の訪問回数も多くなっていたにもかかわらず、学校として十分に目配りや組織的対応ができていなかったのではないかとも指摘された。
内容を教訓に
第三者委員会報告の内容を読む限り、学校側の対応も後手に回って不十分だったのではないかという印象も受ける。受け取り方によっては、生徒への「いじり」や有形力をともなう指導・いわゆる「体罰」やそれに類する行為が横行するなど生徒の人権が十分に尊重されていない学校側の雰囲気が、いじめの背景として作用したとも取れる。
学校側の対応がこのようなものでは、加害生徒側にいじめを指導するどころか、逆にいじめにお墨付きを与えるようなことにもなりかねない。
生徒の人権を尊重する学校づくりが必要だということを示している。