「学校で同級生からいじめを受け、学校側もいじめに加勢するような不適切対応をとったことで適応障害を発症した」として、川崎市立小学校6年だった女子児童が川崎市と加害児童の保護者を相手取り約330万円の損害賠償を求めた民事訴訟で、横浜地裁川崎支部は2020年3月24日、担任だった教員のいじめ対応の不手際を認め、川崎市に約44万円の支払いを命じる判決を出した。一方で加害者保護者への請求は棄却した。
いじめの経過
児童は2016年度、同級生から暴力や暴言などのいじめを受けていたという。児童は被害状況をノートにメモしていたが、2016年10月にそのノートを見つけた同級生らが、「ノートに自分たちの悪口を書いている」と言いがかりを付けて指弾した。
担任教諭は同級生に同調し、この児童にクラスの前で謝罪を強要した。児童は翌日より登校できなくなり、適応障害と診断された。
判決ではこのときの担任教諭の「指導」について、「児童と教師が一団となってこの児童を責め立てている」「いじめの被害者が加害者を含む児童らに謝ることになった」と指摘し、担任の対応について「いじめの原因が被害児童側にあるという印象を与えかねない。被害児童への人格権侵害」として違法性を認めた。
一方で加害児童のいじめの内容については、いじめは認めたものの、常習的とまで認められない・保護者が予見して指導するのは困難と判断して、加害児童保護者の賠償責任を認めなかった。
いじめ加勢はあってはならない
判決で認定された内容は、必ずしも十分な範囲ではないとも思われる。しかしその一方で、教員の指導について不適切だと指摘したことは、重要だといえるのではないか。
被害者がいじめ被害の証拠を記録し、被害を訴えることを逆に責め立て、しかも教員まで加勢したような形になったことなど、とんでもないことである。これでは、いじめ被害を訴えることが悪事であるかのような間違ったメッセージを発してしまっている。
このような行為に道理はないとはっきりと認められたことは、評価されるべきことだといえる。この個別案件に限らず、このような「指導」と称したいじめ行為はあってはならない。
(参考)
◎いじめで女児不登校、川崎市に賠償命令 担任対応に違法性(神奈川新聞 2020/3/25)