「学校の伝統」強要で不登校・転校余儀なくされたと元生徒が提訴:熊本県立高校

 熊本県立済々黌高校(熊本市中央区)に通っていた元生徒が、部活動で丸刈りを強要されてうつ状態になり不登校になった後に退学を余儀なくされたとして、熊本県を相手取り「1円」の損害賠償を求めて熊本地裁に提訴していたことがわかった。

 12月2日に第1回口頭弁論があり、熊本県は請求棄却を求めた。

事件の経過

 報道によると、経過は以下の通りのようである。

 同校に2017年度に入学した男子生徒は、入学直後に「学校の伝統」として応援団の上級生生徒から呼び出され、ほかの新入生とともに30分以上にわたって校舎屋上で校歌の練習をさせられた。

 また生徒はソフトテニス部に入部したが、2019年4月下旬、上級生から「部の伝統」として、ほかの新入生部員とともに無理やり丸刈りにされるなどした。

 生徒は2017年5月に退部したものの、うつ状態に陥って登校できなくなった。「出席日数不足で進級できない」と通告を受け、2018年5月に退学し通信制高校へ転学した。

 元生徒側はこのように訴えているという。

 男性側は、同校内で「シメ」と呼ばれる先輩からの強制指導行為は、100年以上の歴史を持つ伝統校に根ざした独特の文化と指摘。「学校側が違法なシメを黙認・放置し、男性が不登校となった原因と知りながら対策を講じなかったのは安全配慮義務違反に当たる」と主張している。

 男性の代理人弁護士は「明文化されていない校内ルールを問う裁判は珍しく、無批判に続く伝統に一石を投じたい」と話す。賠償金1円について、男性の母親は「賠償金が目的ではない。学校はシメ文化を見直し、謝罪してほしい」と訴える。

毎日新聞(ウェブ版)2019年12月2日『丸刈りなど強制でうつ状態、退学の元生徒が熊本の済々黌高を「1円」提訴』

 生徒が体調を崩して不登校に追い込まれ、転学を余儀なくされるという、人生の重大な選択を強いられたことは、重く受け止めなければならない。

 明文化されたものかどうかに関わりなく、「伝統」の名の下に、生徒に苦痛を与えたり人権侵害にもつながるようなものがそのまま無批判に受け継がれるのは好ましくない。その「伝統」が妥当なのかを常に検証し、必要な場合は見直しなども含めていくことが必要なのではないか。

 また明文化された校則をめぐる裁判は時々おこなわれているものの、明文化されていないルールを問うという問題は、代理人弁護士が指摘するようにこれまであまりなかったと思われる。その意味でも、裁判の動向は注目される。