呉市教科書訴訟、「育鵬社採択無効」訴え:二審でも請求棄却

 2015年の教科書採択に際して、広島県呉市立中学校で育鵬社の社会科歴史・公民教科書が採択されたことをめぐり、「採択の際の基礎資料に1000ヶ所以上の誤りがあった」などとして、市民団体が採択無効を求めて提訴した訴訟で、広島高裁は2019年11月20日、一審に引き続き請求を棄却する判決を出した。

 原告側は、育鵬社教科書採択に際して不正や違法性があったと訴えていた。教科書採択の資料になる「総合所見」について、育鵬社教科書が高評価になるようにデータの操作・改ざんがおこなわれたことや、計1054ヶ所の誤りがあったのにそのまま採択したことなどを指摘したという。

 しかし判決ではそのことを認めず、原告側の訴えを退けた。

 こういう判決になったのは、極めて残念である。

 育鵬社教科書については、教科書の中身そのもののひどさも問題である。一般的な歴史や政治・経済・社会の理解からかけ離れた特異な観点を一方的に押しつけ、特定のイデオロギーへと結びつけようとする構成も疑問である。またこれは、高校受験にも「役立たない」とも指摘され、高校以降での学習にも支障を来たすとも指摘されている。

 育鵬社教科書では中身の問題だけではなく、採択手順の問題も指摘されることが多い。採択の際に公正性を欠くのではないかと思われる不透明な手順があることも、呉市だけでなく、大阪市など多くの地域で指摘されている。

 中身もひどければ、採択の際には不公正と思われる手順が指摘されることとセットになっているような教科書を、そのまま生徒に押しつけるようなことが妥当だといえるのだろうか。

 2020年3月には新しい中学校教科書の検定結果が発表される見通しで、また2020年夏には中学校教科書採択がおこなわれることになる。検定の状況は現時点では明らかになっていないものの、前回に引き続き、社会科(特に歴史・公民)では育鵬社教科書やそれに類する内容のものが重大な論点になることが予想される。教科書採択のプロセスについては、ていねいに見ていく必要がある。

(参考)
◎教科書採択巡る裁判2審も認めず(NHK広島放送局 2019/11/20)