「トロッコ問題」で学校側が謝罪:山口県岩国市の小中学校

 山口県岩国市の小学校と中学校で、同じ心理カウンセラーが担当した授業で、倫理学や隣接分野(心理学や道徳教育論など)では「トロッコ問題」として知られる思考実験の内容を扱ったところ、「子どもが不安を感じた」という保護者の抗議があり、学校側が謝罪のプリントを配布したと、毎日新聞(ウェブ版)2019年9月29日付が報じている。

 山口県の心理教育プログラムとして、2019年5月に中学校2・3年と小学校5・6年を対象に、学級活動の際に心理カウンセラーが入って、プリントを使って「トロッコ問題」を扱ったとされる。報道では、授業の経過について以下のように紹介されている。

 プリントは、トロッコが進む線路の先が左右に分岐し、一方の線路には5人、もう一方には1人が縛られて横たわり、分岐点にレバーを握る人物の姿が描かれたイラスト入り。「このまま進めば5人が線路上に横たわっている。あなたがレバーを引けば1人が横たわっているだけの道になる。トロッコにブレーキはついていない。あなたはレバーを引きますか、そのままにしますか」との質問があり「何もせずに5人が死ぬ運命」と「自分でレバーを引いて1人が死ぬ運命」の選択肢が書かれていた。

 授業は、選択に困ったり、不安を感じたりした場合に、周りに助けを求めることの大切さを知ってもらうのが狙いで、トロッコ問題で回答は求めなかったという。しかし、児童の保護者が6月、「授業で不安を感じている」と東小と市教委に説明を求めた。両校で児童・生徒に緊急アンケートをしたところ、東小で数人の児童が不安を訴えた。

トロッコ問題(イメージ図)

トロッコ問題(イメージ図)

 「トロッコ問題」は、特定の答えがあるものではない。むしろ答えのないものに対して自分はどう考えどう行動するのかという倫理的・道徳的な思考力を見つめ直すものとなっている。

 学校教育の場でこの手の「答えのない問題」を考えるプロセス自体は、何らかの形で必要になってくる。「トロッコ問題」を題材にしたことそのものは不適切とまではいえず、むしろ教材選びの範疇に属するものだと考えられる。

 学校側は、心理カウンセラーがおこなう授業は事前に学校側と打ち合わせを経て内容をチェックするという内規に反したとして、謝罪しているようである。内規という別の問題はあっても、クレームがあったから安易に謝罪するという対応ではなく、授業の意図をていねいに説明することがまず先にあるべきではないのだろうか。