福岡女子大訴訟:原告男性中傷した新潮社に55万円賠償命令

 「栄養士志望だが、家庭の経済事情を考えて自宅から通学できる国公立大学しか進学先として選択できない。その条件を満たす大学は公立福岡女子大学しかなかったが、男性というだけで出願を拒否された。男性というだけで栄養士資格取得に支障が出るのは性差別であり、男女平等に反して違憲。」――福岡県在住だった男性が2015年1月、このように訴え、同大学を相手取って提訴した訴訟があった。

公立女子大願書不受理は違憲と男性が提訴
 福岡市の公立福岡女子大学に入学願書を提出したが男性であることを理由に受理拒否されたことは男性差別にあたり違憲として、福岡県在住の20代男性と代理人が1月19日付で、大学側に不受理処分取り消しや66万円の損害賠償を求め、福岡地裁に訴状を送付...

 この訴訟が報じられると、「学ぶ権利」や「法の下の平等」という問題ではなく、「男性のくせに女子大に入って騒ぎを起こしたいだけ」かのように事実とはかけ離れた内容を描いて興味本位ないしは男性差別的に扱い、原告男性を侮蔑し中傷する動きが、一部マスコミやインターネット上などで多くみられた。

 この裁判では、被告側や裁判所が「学費に困っているのに裁判費用があるのか」「男性のくせに女子大にこだわるのか」など、原告側の主張とはかけ離れた揚げ足取りや中傷を繰り返して審理に入れず、原告側は裁判の継続を断念せざるを得なくて取り下げる結果となったと聞く。

 この訴訟に関連して、新潮社が『週刊新潮』(2015年1月29日発売)で男性を中傷する記事を出したとして、原告男性が新潮社に対し名誉毀損などで約220万円の損害賠償を求めて訴えた訴訟の判決が、2019年9月26日に福岡地裁であった。地裁判決では原告側の主張を一部認め、記事の内容の一部は原告男性への侮辱にあたるとして、新潮社に55万円の支払いを命じた。

 問題となった記事では、「そんなに小遣いが欲しいなら歌舞伎役者みたいに体を売ればいいじゃない。そういう経験がゲイの肥やしになるんだから」などと記載した部分について、原告男性への社会通念を越えた侮辱だと判断した。一方で原告の社会的評価までは傷つけていないと判断した。

 認定された部分は、全体から見れば不十分ではある。しかし一部とはいえども、原告側の主張が認められたのは一定の成果といえるのではないか。

 原告への中傷は、氷山の一角である。当方が把握している限りでも、ほかにも同じ新潮社が発行していた『新潮45』2016年9月号でも、裁判の経過を紹介するという体裁を取りながら、「人権を主張する輩がけしからんから晒し者にして目の敵にする」とばかりの特集の中の一記事として扱い、原告に対して侮蔑的な筆致で書かれていた記事があった。その記事はとあるルポライターの名義だが、当該ルポライターは過去にも、ある「教師の児童いじめ事件」や別の「いじめ自殺事件」でそれぞれ、被害者やその家族を「モンスター」扱いで口汚く中傷し加害者を逆に「異常な人物に陥れられた被害者」と描く書籍を発行していた前歴がある。

 俗物的な中傷ではなく、学ぶ権利や法の下の平等という側面からとらえていくべきである。

(参考)
◎女子大に願書の男性巡る記事、新潮社に55万円賠償判決「限度超える侮辱」福岡地裁(毎日新聞 2019/9/26)
◎新潮社に55万円の賠償判決 「女子大に入りたい男」で(朝日新聞 2019/9/26)