中学校極右歴史教科書の危険性:2020年採択に向けて横浜市で集会

 横浜市で2019年9月20日、2020年度中学校教科書採択に向けた市民集会が開催された。育鵬社などの社会科教科書の危険性についての講演がおこなわれた。

教科書採択をめぐる背景

 中学校社会科教科書では2000年代以降、既存の教科書に対して「自虐史観」などと罵倒しながらおかしな内容を記載するなど、いわゆる極右的な内容の教科書が発行されるようになった。

 2005年度中学校教科書採択では「新しい歴史教科書をつくる会」による扶桑社版教科書が問題となっていた。その後「つくる会」の内部分裂に伴い、扶桑社版教科書の流れを汲むものは、「日本教育再生機構」系の育鵬社と、「つくる会」を引き続き名乗る自由社の2社となり、それぞれ教科書を出すようになった。

 2015年度中学校教科書採択では育鵬社版が採択される事例が各地で目立ち、問題となった。

 横浜市では、極右教科書を推す教育委員長(当時)が主導し、2009年度採択で当時各行政区単位で設置されていた18採択地区中8採択地区で自由社を採択したのを皮切りに、全市1採択地区制度に移行した2011年度・2015年度・2019年度と3回連続で育鵬社教科書を採択した。

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 2019年度採択については、2021年度の新学習指導要領実施の関係で変則的となり、次回の中学校教科書採択は1年後の2020年度となる。

集会で示された内容

 集会の様子を報じた神奈川新聞の記事によると、育鵬社教科書について、戦前の国史教科書と似ているという指摘がされた。

 講演をおこなった東京家政学院大の佐藤広美教授は、以下のような趣旨を述べたという。

 佐藤教授は、大日本帝国憲法発布を「歓迎」した社会の描写や、アジア太平洋戦争での日本軍の「快進撃」についての記述を取り上げ、「育鵬社と戦前の国史の教科書はよく似ている」と指摘。育鵬社の情緒的な文面についても「ファシズムは語りから忍び込む。これは教科書としてまずい」と警鐘を鳴らした。

「戦前の教科書と類似」 育鵬社選ぶ市教委を問題視(神奈川新聞 2019/9/22)

 確かに、育鵬社教科書の記述には、特定の一方的な思考へと誘導するような記述が多くあるように感じる。学問的にも正確とはいえないし、読み手へ一方的な内容を押しつけるような形なのはふさわしくない。

 また集会では、横浜市での採択手続きの強引さについても指摘がされた。

 育鵬社など極右教科書については、中身のひどさも問題ではある。同時に、支持する勢力が強引な手法で押しつける策動をおこなうというのも、各地でセットで起きている。横浜市では、学校現場からの意見反映を廃止する・教科書名を伏せて審議をおこなう・採択は無記名投票など、極右教科書導入策動が始まってから変更されたことが多く指摘されている。

 政治的な意向ではなく、こどもや教育の観点から適切な審議がおこなわれることが重要である。

(参考)
◎「戦前の教科書と類似」 育鵬社選ぶ市教委を問題視(神奈川新聞 2019/9/22)