2020年度小学校教科書、社会科の比較

 2020年度から使用される小学校教科書。各地で教科書展示会が開かれ、2019年7月~8月にかけて採択される予定となっている。

 社会科教科書については、東京書籍・教育出版・日本文教出版の3社が発行した。前回発行した光村図書は、今回は撤退している。

 3社の教科書には、「これは全体的にダメ」というような「変な」教科書はない。一方でそれぞれの教科書に、各単元ごとに優れている部分、逆にこれはどうかと思われる部分があり、一長一短だと感じた。

 各単元での説明内容はどんな状況なのか。学校所在地周辺の市や県に関連する課題など、授業の中で特に重点的に取り上げたいテーマが各教科書でどう扱われているか。――そういった内容が、採択を左右することになるのではないかとも感じる。

領土問題(5年)

 領土に関連して、北方領土・竹島・尖閣諸島についても、日本固有の領土として触れられている。3社とも、政府・文部科学省の方針を反映して、かなり強い表現となっている。

公害(5年)

 四大公害については、日本文教出版では四日市ぜんそくをメインに取り上げ、ほかの公害については別表で紹介している。

 東京書籍では水俣病をメインで取り上げ、ほかのものについては別表で紹介している。

国民主権(6年)

 国民主権の内容については、日本文教出版や東京書籍では、天皇の国事行為についての説明が大きな割合を占めているのが気になった。

 教育出版では2社と比較すれば、国民主権そのものの説明が多かった。

「大仙古墳」か「仁徳天皇陵古墳」か(6年)

 大阪府堺市にある、一般には「仁徳天皇陵」として知られる前方後円墳の名称をどう表記しているか。

 被葬者が仁徳天皇だと確定されていないので、「仁徳陵と伝えられてきた古墳」「宮内庁に仁徳天皇陵として管理されている古墳」という意味で「仁徳天皇陵古墳」「仁徳陵古墳」と呼ぼうという流れが生まれた。一方で、そのような呼び方をしても、被葬者が確定されていないのに仁徳天皇と結びつける形になる点は解決されていないとして、通常の遺跡の命名方法に沿って、所在地の地名から「大仙古墳(大山古墳)」と呼ぶのが適切だとする流れも出た。――という歴史研究との整合性に注目した。

 教育出版は本文で「大仙古墳」、写真の注釈で「大仙(仁徳陵)古墳。大山古墳とも表され~」という、比較的ていねいな表記。

 日本文教出版は「大仙(仁徳陵)古墳」と表記。

 東京書籍では本文で「仁徳天皇陵古墳(大仙古墳)」、写真の注釈で「仁徳天皇陵古墳」。

日中戦争(6年)

 日本文教出版では、南京事件について欄外での注釈ながらも、「ナンキン事件」と名前を挙げて記載した。犠牲者数などについては明示せずに「事件の規模には論争がある」という形ながらも、経過を比較的詳細に書き込んでいる。

 他社では「日本軍による占領や市街戦で被害を及ぼした」という内容にとどめ、南京事件について特段の言及はされていない。

沖縄戦「集団自決」(6年)

 沖縄戦での「集団自決」については、日本文教出版と東京書籍が取り上げている。

 2007年の高校日本史教科書検定から続く「集団自決」教科書検定問題の影響か、「追い詰められた住民が集団で自殺するなど悲惨な事態が生じました(東京書籍)」「追い詰められた住民の中には「集団自決」した人もいました(日本文教出版)」という表現にとどまり、日本軍による強制性については明示していない状態となっている。