道徳教科化での授業担当教員の苦悩:朝日新聞がリポート

 朝日新聞(ウェブ版)2019年6月20日付に『埼玉)道徳教科化、教材の吟味に悩む現場』が掲載されている。

 小学校では2018年度から、中学校では2019年度から、道徳が「特別の教科」となった。その一方で、1年間授業をおこなった小学校教員からは「教科書掲載の教材をそのまま使うと、価値観の押しつけにつながるのではないか」という疑問が出ていると、埼玉県内での取材をもとに明らかにしている。

 さいたま市の教諭は、同市で2018年度・19年度に使用している教育出版の道徳教科書について、「授業で飛ばさなければならない部分が教科書にいくつもある」と訴えている。4年教材「あいさつでつながる」では、「その日のあいさつを自己評価させ、点数や理由を書く」という教材構成に疑問を持った。教科書では記述例として「30点 先にいわれた」「80点 元気な声でいえた」「40点 声が小さかった」などと記載されている。教諭は同学年担当の教員と話し合った上で、授業ではその部分については触れずに、あいさつの大切さについて議論する構成に切り替えたという。

 また春日部市の教員らでつくる道徳授業研究会では、1年教材「かぼちゃのつる」の授業についての議論がおこなわれた。「かぼちゃが、ほかの生き物の注意を無視して畑の外の道路までつるを伸ばしたが、走ってきたトラックにつるを切られ痛いと泣く」という物語で、わがままを抑えようというのが主題となっている。これには「自己責任論への誘導」「カボチャがツルを伸ばすのは植物の生態なのに、擬人化して『わがまま』ととらえるのはおかしい」などの疑問が指摘されている。

道徳教科化による現場の困惑

 道徳の教科化については、教科化の案が出た当初から、教科書の内容を一面的に「正解」として特定の価値観に誘導しかねないなどの疑念が示されてきた。

 そして実際に教科として導入されると、現場の教員が授業構成に困惑することになっている。

 小学校教科書では、2018年度・19年度に使用されている教育出版は「あいさつの仕方やお辞儀の角度にも介入している」「下町ボブスレーを教材にしたが、『ものづくり・中小工場の技術』という教材本文の主題とは直接的な関連が薄い、ボブスレーのソリに乗ってポーズを取る安倍首相の写真を掲載した」など、特定の価値観を押しつける傾向が強いとして批判を浴びていた。

 教育出版の構成が特に問題になったものの、他社教科書も、道徳を「教える」という制約から、多かれ少なかれ価値観の押しつけが避けられない状況となっていた。

教科書展示会

 道徳を含めた小学校教科書は2019年春の教科書検定で改訂版が出され、2019年夏に採択がおこなわれる予定となっている。2019年6月から7月にかけ、各自治体で教科書展示会がおこなわれている。

 道徳にしてもその他の教科にしても、教科書の内容や構成をチェックし、よりよいものを採択していくよう求める動きを作っていくことが重要になってくる。