「ゼロ・トレランス」福山市では2019年度から変更

 『しんぶん赤旗』2019年6月1日付が『子どもの言い分聞かず「特別指導」 親・教師ら「教育守る会」結成 「ゼロトレ」やめた 学校現場でいま』を掲載している。

 広島県では「ゼロ・トレランス」を背景にした「生徒指導規程」による生徒指導が進められてきた。2010年頃から福山市内の小中学校で導入されはじめ、その後3年ほどで広島県内ほぼすべての小中高校・特別支援学校に広がったと指摘されている。

福山市・広島県における「ゼロトレ」指導

 「ゼロ・トレランス」による指導について、以下のような被害が報告されている。

  • 親子で高校の入学説明会の会場に行った際、会場に入ろうとすると、息子は初対面の高校教員から「入るな」と怒鳴られて腕を引っぱられ、教員数人がかりで取り囲まれて「髪の毛の色」や「シャツをちゃんと入れろ」などといわれた。(保護者)
  • 高校入学説明会の際、周りが番号札をもらっているのに自分はもらっていないことに気づいた母親。娘は「髪の毛を違反している生徒に渡しているみたい」と指摘した。(保護者)
  • 指導に立腹した中学生の子どもが教員に抗議してもみ合いになった。この際に「この生徒が教員の胸ぐらをつかんだ」ことを目撃した別の教員が校長に報告し、校長は事実確認をしないまま警察を呼んで逮捕させた。それ以来学校に行けなくなった。(保護者)

 これらの問題は福山市議会でも取り上げられ、また国会では2018年3月の参院文教科学委員会でも取り上げられていた。

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 「ゼロ・トレランス」によって、高校では進学後数日で中退するケースも報告されているという。福山市では、保護者・市民や研究者・議員・教師などが集まり「こどもと教育を守る福山市民の会」を結成し、「ゼロ・トレランス」問題の学習会や交流を重ねたという。

一定の改善はみられたものの

 福山市では2019年4月、「生徒指導規程」が大きく変更された。福山市教育委員会は、「児童生徒が主体となって『考え・作り・守る』もの」へと大きく方向性を変更した。

 それ自体は一定歓迎されるべきものではある。その一方で、それまでの反動で極端な発想も生まれているという。

 規程に関しては、市教委の主張とはかけ離れた変更過程がされたという。中学校教員は従来の「規程」の中でも合意づくりなどの取り組みを進めてきたことや、その一方で生徒から意見を聞いたのは1回(50分)の学級活動だけだったこと、変更過程は教員にも知らされなかったことなどが指摘された。

 また「規律ありき」から180度変わったことで、研究授業では、「子どもの無秩序な発言に任せて騒がしい状態になり、担当教員が困っていた」ことが「子どもの自発性を大切にした授業」という極端な評価を受けたという。研究者からは「授業が成立しない。学力を身につけるのが困難な子どもが背景ごと放置されかねない」とする指摘も出た。

 そして広島県教委の手引きでは別室指導などの規程が残っていることから、「厳しくしないから荒れた」などとして「ゼロ・トレランス」が復活する口実にされるのではないかとも危惧されている。

自主性と自立性を育てる

 「ゼロ・トレランス」は生徒の自主性を奪うものであり、改善することには異論がない。

 しかし、「極端に厳しくした反動で、児童生徒が自主的自律的に考える力を奪った。そして一度厳しいルールを取り払うと何をしていいのかわからなくなり、極端な無秩序を生む。そして無秩序状態を口実に従来の厳しい状態を復活させる」というような悪循環になってはいけない。

 極端から極端へと飛び移るのではなく、子どもの自治の力を育て、自主性・自立性・納得をもとにした指導を軸にしていかなければならない。