埼玉県川口市立中学校いじめ:被害者をネットで中傷した人物を民事提訴

 埼玉県川口市立中学校でのいじめ事件に関連して、被害者の男子生徒の実名をあげて中傷する内容がインターネット上に書き込まれたとして、被害に遭った生徒(現在は中学校を卒業)とその母親が5月27日、同じ学校に通っていた生徒の保護者2人に対してあわせて160万円の損害賠償を求める民事訴訟を、さいたま地裁に提訴した。母親が翌5月28日に明らかにした。

 この事件は、生徒が市立中学校2年だった2015年、所属していたサッカー部でいじめを受けて不登校になるなどした問題である。学校側や市教委の不適切対応なども問題になっていた。

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 中傷書き込みについては、生徒の実名とともに、「こんなんだと一生いじめられっ子」などと中傷する内容が書き込まれたとされる。生徒側は中傷書き込みの発信元の情報開示を求め、発信者を特定した。発信元は、同じ学校に通っていた生徒の保護者名義で契約されていたものだという。

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 被害者を中傷する内容は、学校側のいじめ隠蔽工作の内容とも連動しているともされた。いじめに対して、加害者側に立ち被害者を中傷するなど、許されることではない。

被害者中傷は珍しくない

 いじめ事件(生徒間のいじめ事件、教師が加害者のいじめ事件も含む)、教師による暴力や「体罰」事件、教師による性的虐待事件などでは、加害者本人やそれに近い人物、もしくは学校関係者・地域住民が発信元だと強く疑われる形で、被害者を中傷する内容が広められることは珍しいことではない。

 古くは、1995年に発生した福岡県の私立高校での「体罰」傷害致死事件で、加害者教師への寛大な措置を求める嘆願が、被害者がどうしようもない不良だったかのような事実無根の内容で貶めるような誹謗中傷とセットで集められたことがある。

 今回の事件と同じ川口市の別の中学校で2000年に発生した中学生いじめ自殺事件では、被害者一家を中傷するような怪文書が被害者宅に送りつけられた。被害者側が調査すると、怪文書はいじめ加害者の母親のしわざだった。

 長野県丸子実業高校いじめ自殺事件(2005年)では、「自殺は(異常な性格の)母親のせい。生徒は死んで救われた」などと中傷する内容の年賀状が、遺族宅に届いたという。

 地域の「口コミ」での中傷のほか、福岡市での教師による児童への人種差別いじめ事件(2003年)や長野県丸子実業高校いじめ自殺事件では、加害者側とつるんだライター(両事件とも同一のライターが関与)により、被害者を「モンスター」と決めつけて中傷する書籍が発行されるという異常な手口もみられた。

 近年ではインターネットの普及に伴い、加害者側関係者や地域住民などによる、ネット経由での被害者中傷も増加している。

 2003年に千葉県の小学校養護学級担任が受け持ちクラスの児童に性的虐待を加え、のちに教師の犯行が認定されて民事での損害賠償判決が確定した「浦安事件」では、犯人の教師(事件後依願退職して自称写真家に転身)や近いと思われる者のしわざだと強くうかがわせる内容とともに、被害者や家族の実名と中傷がネット上に書き込まれたり、事件ニュースを引用したブログに対しても、プロバイダに対して法的根拠のない「削除要請」での恫喝があるなどの中傷があった。加害者側支援者が自分たちにとって意に沿わない記事を書いた新聞社に「人権侵害」だと「殴り込み」をかけるなどもあった(当該新聞社は「検証記事」をだし、抗議・殴り込みには根拠がないと返り討ちにした)。

 いじめ事件等でのネット経由での中傷については、直接被害者を中傷する手口と、被害者側の発信や事件ニュースの感想を書いただけの第三者の正当な発信に対して「自分たち(加害者)への名誉毀損・人権侵害」と難癖を付けて「犯罪者」呼ばわりで恫喝したりプロバイダに嘘の「送信防止措置」を送りつけて威嚇するなどで発信を妨害し萎縮させることで結果的に加害者側に不都合な情報を抹殺する手口に大きく分かれる。

 後者の手口については、今回の川口市のいじめ事件には直接関係ないので、ここではこれ以上触れない。被害者に対してあることないこと事実無根の内容で貶め、いじめなど不適切行為・犯罪的行為を正当化する手口は、決して許されることではない。

 今回のいじめ事件での中傷の加害者に対しては、裁判を通じてしかるべき措置がとられることが強く望まれる。