兵庫県朝来市立梁瀬中学校の女子バスケットボール部で、練習中に保護者の一人が部員の生徒4人を平手打ちするなどの暴行を加え、目撃した部員1人がショックで不登校になっていることがわかった。
事件の経過
「神戸新聞」2019年4月17日付によると、事件の経過はおおむね以下のようである。
事件は2018年8月12日の練習中に発生した。練習を見学していた保護者の男性が、練習内容が不満だったとして「もっと真剣にやれや」などと怒鳴りながら、自分の子どもを含む4人の女子生徒(いずれも当時3年)を平手打ちした。
さらにこの保護者は「今からでも全中(全国中学校体育大会)行くのはやめられる」「外で話し合ってこい」などと怒鳴り、部員を体育館の外に退出させるなどした。
顧問教諭や外部コーチは保護者の暴行の様子を目撃しながら、止めるなどはしなかった。
一連の経過を目撃した女子部員の一人が、事件後強い恐怖感を訴えるようになった。2018年9月頃から登校を渋りだし、同年11月頃には不登校状態になったという。
全国レベルの「強豪校」が背景か
同校は全国中学校体育大会(全中)で上位入賞する実力だという。兵庫県豊岡市・京都府福知山市などの近隣地区や、遠く離れた他県からの「バスケ留学」の転入生が増えている。他県・他地域からの転入生は、親が共同で部屋を借りるなどして生徒らは数人グループで暮らし、親が交代で面倒を見ているケースもあるとされる。
「バスケ留学」のために全国レベルの生徒が転入してくる影響で、地域出身の生徒がバスケットボール部に入りにくいなどの声もあり、また朝来市議会でも不適切な越境入学ではないかと問題になっていた。
さらに部員らは学校の部活動とクラブチームの両方に所属する形になり、2つの活動の境界が曖昧になっているという指摘もされている。
事件を止めなかった外部コーチはクラブチームの指導者でもあり、元々は梁瀬中学校に教諭・バスケットボール部顧問として長年勤務して同校を全国レベルに育てた経歴があるという。関係者によると、バスケットボールでは全国区の指導者として知られているとされる。事件発生時は定年退職して他校で再任用教員として勤務していたものの、「古巣」の指導もおこなっていた形になる。
部活動の問題点が濃縮された形に
報道の範囲では、部活動至上主義・勝利至上主義の問題点が、極端な形で濃縮されているとも感じる。
暴力を是とする「指導」、不適正とも受け取れる越境入学の問題、部活動とクラブチームの線引きの問題、一部保護者の過熱など、不適切な問題は多岐にわたっている。
保護者が生徒に暴力を振るったこと、指導者がそれを見て見ぬふりしたこと、それらが重なって生徒に強い恐怖を与えて不登校に追い込んだこと、いずれも問題である。