埼玉県川口市立中学校いじめ事件:ネット中傷投稿者を提訴へ

 埼玉県川口市立戸塚中学校のいじめ事件に関連して、被害にあった生徒(現在は卒業)と家族を中傷する書き込みがインターネット上に繰り返し書き込まれている問題。

 この問題では2018年、東京地裁が被害者側の訴えを認めて、誹謗中傷書き込み4件について発信者情報を開示するようにプロバイダに命じた。

埼玉県川口市いじめ事件:ネットの中傷書き込みに発信元情報開示命じる
 埼玉県川口市立戸塚中学校に通っていた男子生徒が在学中にいじめを受けて自殺を図った問題に関連して、「ネット上でこの生徒への中傷書き込みがあった。実名も晒された」として被害生徒らがプロバイダに発信元情報開示を求めた訴訟で、東京地裁が12月10...

 この問題について、「埼玉新聞」が2019年1月7日付で続報『<川口いじめ>元生徒、ネット上で誹謗中傷した投稿者を提訴へ プロバイダーが情報開示「匿名でひきょう」』を報じている。

いじめ・中傷事件の概略

 報道によると、2018年の年内のうちに、問題となった書き込みをおこなった発信者の契約者情報(住所・氏名・メールアドレス)が開示された。契約者が投稿者だとは限らないとして、被害者側は契約者の戸籍謄本や住民票を調査して投稿者を特定した上で、刑事告訴や損害賠償訴訟を視野に入れて準備しているとのこと。

 いじめは2015年、生徒が所属していたサッカー部で起きたもの。同級生からの暴力などに加え、顧問教諭も暴力行為を加えるなどしていたことが指摘された。生徒は自傷行為を起こすなどし、2017年に調査委員会が設置された。

 一方で、インターネットの掲示板が開設され、生徒への中傷が繰り返された。

 元生徒側は「保護者会での学校側の説明が親子を悪人に仕立てる虚偽の内容だった。学校が事実と異なる説明を繰り返したことが、ネット上で元生徒を誹謗中傷する投稿が激しくなった一番の原因だ」と訴えている。

<川口いじめ>元生徒、ネット上で誹謗中傷した投稿者を提訴へ プロバイダーが情報開示「匿名でひきょう」 埼玉新聞(web版)2019年1月7日

 生徒側は、いじめ事件・生徒に関する書き込みのうち、特に悪質と判断した4件について、情報開示を申し立てた。

 「埼玉新聞」では、中傷書き込みの一部が画像として出されている。

 書き込みの内容や文体から印象を受けたというだけの直感的な感想ではあるが、問題となっている中傷書き込みについては、保護者・地域住民・学校関係者など、大人の書き込みの可能性があるのではないかと思える。

被害者中傷は過去の事件でも発生

 いじめ事件や学校関連の事件では、加害者本人が自己正当化を図って被害者を攻撃したり、周囲が加害者に加勢して被害者に非があったかのように中傷する行為が、広範にわたっておこなわれることがある。過去にもそういう事例が多数報告されている。

 有名な例だと、近畿大学附属高校「体罰」死亡事件(1995年)、大津いじめ自殺事件(2011年)などで、加害者に近い側から、被害者への誹謗中傷がおこなわれた。

 これは同じ川口市で起きた事件だが、別の市立中学校で2000年に起きたいじめ自殺事件では、被害者や家族を中傷する内容の出所不明の怪文書が家族のところに複数回送りつけられるなどしたが、調査してみるとその怪文書の作成者は「いじめ加害者とされた生徒の保護者」だと判明したこともあった。

 2000年代半ば頃までは地域での「口コミ」で中傷が流されることが主だった。一方で近年では、インターネットの普及・発達により、中傷の場がネットにも移っている。

 また、加害者側がネットを悪用して誹謗中傷をおこなうパターンは、直接的な誹謗中傷書き込みだけではない。加害者側にとって不都合な指摘を掲載した新聞記事、それを引用して差し障りのない感想を書いただけの第三者のブログ、そして被害者側が情報を整理したサイトなどを「自分たちへの誹謗中傷」と恫喝して、サイト作成者を「誹謗中傷・名誉毀損の犯罪者」呼ばわりで中傷しながらプロバイダに虚偽の理由での削除要請をおこなうなどして、サイト作成者に不当な圧力をかけ、加害者側にとって不都合な内容を社会的に抹殺して不当削除させようと図るという、今回の手口とは異なる手口での誹謗中傷も報告されている。

 このような手口での誹謗中傷・名誉毀損のケースもあるので、今回の個別のケースを離れた一般的な観点からいえば、開示請求については個別の事例ごとにていねいに吟味されるべきである。また嫌がらせ目的での不当な虚偽通報での削除要請・開示請求などもありうるので、そのようなことが発生した場合には毅然とはねのけるなどの対応を取らなければならない。

 しかし今回の個別の件については、明らかに加害者側による、被害者側への中傷書き込みと受け止められるべきものだといえる。今後、ていねいかつ厳正な対応が求められている。