大阪市教科書採択地区:「都構想」(大阪市廃止・解体)と同じ区割りで検討か

 大阪市の教科書採択地区細分化問題について、大阪市教育委員会が、市政与党の大阪維新の会が掲げる「大阪都構想」=大阪市廃止・解体案での新特別区案4区と同じ区域になるよう、4採択地区で検討していることが明らかになった。

教科書採択地区の経過

 大阪市では2011年度まで、市内の教科書採択地区について、地理的・歴史的につながりが強く地域性の近い近隣行政区2~4区をブロック化した8採択地区制度で実施してきた。

2011年までの大阪市内の教科書採択地区

▼第1地区:北区・福島区・此花区▼第2地区:都島区・旭区・城東区・鶴見区▼第3地区:中央区・西区・港区・大正区▼第4地区:西淀川区・淀川区・東淀川区▼第5地区:東成区・生野区▼第6地区:東住吉区・平野区▼第7地区:住之江区・住吉区・西成区▼第8地区:天王寺区・浪速区・阿倍野区

 維新市政になり、全市1区への教科書採択変更が2014年度小学校教科書採択から実施された。表向きは「全市で同じ教科書を使用すれば、教材研究の成果などを共有できる。転校などの際に同じ教科書を使うことができる」などとしていた。

 しかし教科書採択地区については、▼文部科学省も「将来的には採択地区細分化が望ましい」と言及している。▼教科書採択地区を細分化した方が教員の教材研究のモチベーションが上がるが、広くすると逆に教員にとっては他人事扱いになって教材研究の能率が下がる。▼転校を理由にしても、大阪市外への転出や市外からの転入もありうるので意味がない。――などが指摘された。

 また、極右的・復古反動的・歴史修正主義的な記述で知られる、育鵬社などの社会科歴史・公民教科書を採択させやすくするための策動ではないかとも、横浜市などで実際にそのような先例があったことからも警戒されてきた。

 市政与党の大阪維新の会は、育鵬社などの教科書を採択するよう求める要請をおこなったこともある。

 そして2015年の中学校教科書採択では、育鵬社の中学校社会科歴史・公民教科書が採択された。その際に、育鵬社教科書執筆陣と密接なつながりがある「日本教育再生機構」とも関係がある人物が会長を務める住宅販売会社「フジ住宅」が、会社ぐるみで教科書展示会会場に従業員を動員し、育鵬社教科書を採択するよう求める来場者アンケートを同一文面で何十枚も書いて投函していたことが明らかになった。

 それらの不正発覚も背景となり、教科書採択地区細分化を求める陳情が市会で採択されていた。

 2019年夏の小学校教科書採択に間に合わせるためには、府内の採択地区を承認する2019年2月の大阪府教育委員会会議に間に合うよう、2018年の年末までに大阪市教委として採択地区の方向性を決める方向で検討がおこなわれてきた。

「都構想」と結びつけることは許されない

 採択地区細分化そのものは当然の方向性ではある。

 採択地区を細分化するにしても、2011年以前の8ブロックに戻す、もしくは24行政区各区ごと、可能ならば行政区内をさらにブロック割りするなどの方法が合理的である。

 しかし今回の4採択地区案は、「大阪都構想」での特別区案と同じ区割りになっている。この区割りは不当ではないか。

 そもそも「大阪都構想」なるものは、2015年5月17日の住民投票で明確に否決され、維新の側も「住民の判断なので重く受け止める」としたものである。

 吉村洋文・現大阪市長(当時衆議院議員)は、住民投票で「否決」の結果が判明した直後、このような発言をおこなっている。

 しかし維新は、2015年11月の大阪府知事選挙・大阪市長選挙では「都構想」の明言や争点化を避けながら、選挙後に「選挙で当選したから都構想再挑戦が認められた」と勝手なことをいいだし、再び大阪を混乱に陥れている形になっている。

 そして、維新は2015年の「5区案」に代えて、新たに「4区案」の区割りを出したという経過。議会では反対が強い状態となっている。

 教科書採択地区の区割りについては、教育活動や地域性などを慎重に踏まえたものでなければならない。しかし、大阪市民の間からは反対が強い大阪市の廃止・解体を元にした「特別区」案と合致する形で教科書採択地区の案を出してきたのは、教育委員会が維新市政に忖度したものだとも受け止められ、重大な問題だといえる。政治が教育を振り回している形にもなっている。

 せめて当面は、2011年以前の8ブロック制に戻すべきではないか。