鹿児島県奄美市立中学校生徒自殺、担任の不適切指導による「指導死」と認定

 鹿児島県奄美市立中学校1年だった男子生徒が2015年11月5日に自殺した事案をめぐり、市の第三者委員会は12月9日、「担任教諭の不適切な指導が自殺の一因」と指摘する報告書をまとめた。

事案の経過

 報道によると、担任教諭がこの生徒を「いじめ加害者」と誤認して指導をおこなったこと、背景には担任教諭の普段からの「体罰」を含めた高圧的な指導があったことなどが指摘されている。

 報道の内容を総合すると、経過はおおよそ以下の通りになっているようである。

 2015年11月2日、この生徒の同級生が学校を欠席し、その際に母親から「嫌がらせを受けているので学校に行きたくないと訴えている」と連絡があった。

 これを受けた担任教諭は、11月4日に同級生に対し「嫌なことをされたなら、具体的な内容をこの紙に書いて提出するように」と指示した。同級生は複数の生徒の行為をあげ、この男子生徒については「方言で何か言ってきた」と記した。

 担任教諭は、同級生が書いた文書の内容から、自殺した生徒を含む生徒5人が同級生へのいじめに関与したと思い込んで、11月4日に5人を呼び出して指導をおこなった。

 担任教諭から「同級生にしたことを紙に書け」と迫られた男子生徒には心当たりはなく、「(その同級生が)自慢話の時、『だから何?』と言った。話を最後まで真剣に聞けていなかった」というやりとりのことだったのではないかと答えた。

 同級生がこの男子生徒について「方言を言ってくる」と訴えたことについては、同級生は「方言の意味が理解できず、悪口を言われたと勘違いしていた」として、男子生徒と和解していた。

 担任教諭は「(同級生が不登校になったら)責任取れるのか」などと迫った。男子生徒は教師の指導について「意味がわからない」などと別の同級生に漏らしていた。

 生徒の帰宅後の同日午後6時頃、担任教諭は事前の連絡なしに生徒宅を家庭訪問し、「誰にでも失敗はあることなので、改善できればいい」と告げた。両親は不在で、祖母が応対したという。生徒も同席し、涙を流していた。

 担任教諭が家庭訪問を終えた直後の同日午後6時55分頃、この生徒が自室で首を吊っているのを、帰宅した母親が発見した。「こうして罪を償うことを決めた」などと記した遺書が残されていた。

 第三者委員会では、担任教諭の行為について「同級生から十分に話を聞かずに対応した。男子生徒側にも十分に話を聞かずに、いじめがあったと思い込んで対応した」と指摘し、不適切だと認定した。

 さらに当日の対応についても、学校組織としての対応ではなく、担任教諭1人の判断でおこなっていたことも指摘された。

担任教諭の普段からの言動

 また担任教諭については、聴き取りの結果、「教卓を蹴り飛ばすなどの威圧的行為」「部活の練習でミスをした女子生徒にボールをぶつける」「たばこの吸い殻の入ったコーヒー缶を顔付近めがけて投げつける」などの行為が日常的にあったことが、複数の生徒の証言から明らかになった。

 当日の指導の際も、別の同級生に平手打ちを加えていたことも指摘された。

 自殺した生徒も担任教諭について、自殺約1ヶ月前の2015年10月に「意味の分からないところで怒る。目を見るのが怖い」などと家族に訴えていたという。

学校や市教委の不適切対応

 また奄美市教委は、生徒の自殺を受けて実施した臨時の校長研修会で「いじめた側の子が責任を感じて自殺した」などと話したとされる。

 第三者委員会の設置を申し入れた両親に対して校長が「全部公になる。マスコミなども来る。学校も混乱する。思いとどまってくれないか」などと迫っていた。

 第三者委員会では、それらの行為について不適切だとした。

防げる方法はなかったのか

 普段からの威圧的な指導に加えて、当該事件についても情報共有などをせず担任教諭一人の思い込みだけで対応したことが、最悪の状況につながったという指摘は、重く受け止める必要がある。

 適切に対応していれば、ここまでこじらせなくて済んだのではないかという気がする。生徒指導のあり方について、同種の事件を未然に防ぐためにも、教訓を活かしていく必要がある。

(参考)
◎奄美市中1自殺、県内初「教員指導が原因」と結論(南日本新聞 2018/12/9)
◎奄美中1自殺は「指導死」 第三者委が市に報告書提出(毎日新聞 2018/12/9)
◎奄美中1自殺 父無念「担任が話聞いてくれれば」 生徒、作文で「生きることに感謝」(毎日新聞 2018/12/9)