大阪市教科書採択地区「年内にも結論出す方向」:大阪市会で答弁

 大阪市会教育こども委員会が12月6日に開かれ、教科書採択地区の複数化の問題についても質疑がおこなわれた。

 大阪市教委の担当者は、「現在市教委で検討中」「2019年夏(2020年度以降使用予定)の小学校教科書採択に関する採択地区は、2019年2月の大阪府教育委員会会議で承認することになっている。そこに間に合わせることを考えると、大阪市教委としては年内にも方向性を決めて発表する」と答弁した。

大阪市での教科書採択地区の問題

 大阪市での教科書採択は、かつては市内を8ブロックに分けた8採択地区制度だった。

 しかし維新市政下で、全市1区への採択地区統合がおこなわれた。2013年12月に大阪市教委が採択地区統合方針を決め、採択地区を決める権限がある大阪府教委が2014年2月の教育委員会会議で承認して正式決定となった。

 2014年の小学校教科書採択、2015年の中学校教科書採択、2017年の小学校道徳教科書採択、2018年の中学校道徳教科書採択と、4度にわたって全市1区での教科書採択が実施された。

 採択地区統合については、大阪市では「全市1区にすることで教材研究などがしやすくなる」「転校の場合などに教科書が変わらないなどのメリットがある」などと主張していた。

 しかし「大阪市外へ転校した場合は意味がない」「逆に教員の教材研究のモチベーションが下がった」という指摘もされた。また、中学校社会科で育鵬社教科書などを採択しやすくするための策動ではないかという見方もされていた。

2015年中学校教科書採択:採択地区細分化の声が高まるきっかけにも

 2015年8月の中学校教科書採択では、社会科歴史的分野・公民的分野において、育鵬社教科書が強引な手法で採択されたことが問題になった。

 大森不二雄教育委員長(現・大阪市特別顧問)などが強引な議事進行をおこなった。また産経新聞社グループ幹部出身の教育委員が、産経新聞社の子会社でもある育鵬社教科書について、教科書の発行母体とも密接に関係がある日本教育再生機構の雑誌に教科書問題に関する寄稿をおこなったことで「利害関係者ではないか」と指摘が出た。

 採択に際しての教科書展示会では、来場者が教科書採択についての意見を書き込むアンケートで不正があったことが指摘された。会長が日本教育再生機構の関係者でもある住宅販売会社「フジ住宅」で、「アンケートで賛成意見が多いほど採択されやすい」と育鵬社からフジ住宅にもたらされた情報に沿って、業務の一環として従業員を教科書展示会会場に派遣してアンケート用紙を大量に持ち帰り、育鵬社教科書を支持するほぼ同一文面の意見を複数枚記入し、再び会場を訪問して大量のアンケートを投函する手法で、不正がおこなわれた。

 大阪市教委事務局のアンケート集計担当者は集計作業の際「ほぼ同一文面で、筆跡も酷似している回答が何十枚もある」と不審点に気づいて上司に相談した。しかし市教委事務局上層部はそのまま集計を指示し、その集計結果が教育委員会会議に提出されたことも明らかになった。

 一連の教科書採択での不審点が市会教育こども委員会でも問題になり、「採択の透明化」や「教科書採択地区の複数地区化」を求める陳情が採択された。

採択地区の複数化は不可欠

 市会で複数回にわたり、教科書採択地区の複数地区化を求める陳情が採択されていることは、市教委としても重く受け止めなければならない。

 この日の市会では、「検討中」という説明にとどまり、実際に採択地区を複数化する方向なのか、もしくは複数化を拒否するのかなど、検討事項の具体的な進捗状況については明言しなかった。

 教育委員会会議では、発表されている議題を見る限り、教科書採択地区に関する論議は継続的におこなわれているようだが、当該部分に関する会議の内容および議事録は「非公開」としている。

 大阪市教委がどのような結論を出すかについては、実際に結果が発表されるまでは不透明だが、結果にも注目したい。