企業主導型保育所、保育士一斉退職で休園:東京・世田谷区

 東京都世田谷区の企業主導型保育所「こどもの杜」が運営する2保育所で2018年10月末、保育士が一斉退職してうち1園が休園となったことがわかった。園児が転園を余儀なくされたり、保護者が仕事を休んで子どもの面倒を見るケースも相次いでいるという。

事実経過

 報道を総合すると、事実経過はおおむね以下の通りとなっている様子。

 この保育所は、2016年度に新制度として導入された「企業主導型保育所」として設立された。

 しかし2018年10月、上北沢駅前保育園(世田谷区上北沢)の保育士と、下高井戸駅前保育園(世田谷区赤堤)の保育士が退職の意向を示した。経営者側は保育士派遣を要請するなどしたが見つからず、所属保育士全員が退職した上北沢駅前保育園は2018年11月より休園した。また下高井戸駅前保育園では臨時保育士を確保の上で開園している。

 保育士の一斉退職の背景には、給与未払いなど労働条件の問題があったと指摘されている。

 休園となった上北沢駅前保育園の児童10人のうち、2人は下高井戸駅前保育園で受け入れたものの、残る8人については行き先が未定のままになっているという。その影響で、子どもの面倒を見るために出勤できない状態になっている保護者もいると指摘されている。下高井戸駅前保育園の園児についても、いつもの保育士がいないなど環境の急激な変化に泣き出す子どもがいるなどの状況もみられた。

「企業主導型保育所」の制度が問題の一因と指摘も

 企業主導型保育所は、待機児童対策として国が2016年度に新設した制度である。施設の整備費や運営費などへの助成は認可保育所並みにおこなわれる一方で、保育士配置基準や面積基準は認可園より緩くなっている。

 また行政側のチェック機能も十分ではない。企業主導型保育所の助成認定は、国が委託した公益法人がおこない、所在地の自治体は関与しない仕組みになっている。認定の審査も書類のみで、経験の浅い業者や新規参入業者でも書類が整っていれば認定されるとしている。

 そのため、保育条件の低下や、助成金目当ての質の低い業者が紛れ込むのではないかという不安も指摘されていた。

 保坂展人世田谷区長は、ツイッターで「企業主導型保育所」の問題点を指摘し、改善策を求めるとしている。

 当該保育園の経営者側は、保育士の一斉退職騒動について、「給与未払いはない」「子どもの情報の引き継ぎもなく、愛情はなかったのかと悲しくなる」などとしているという。

 しかし「ブラック企業」や「やりがい搾取」の状態だと、保育士にも生活や人生があるのだから、機会と条件があれば逃げ出しても必然ではないか。

 また世田谷区では、別の企業が経営する保育所でも同様に、「休園」「保育士一斉退職による保育士不足・受け入れ制限」のトラブルが数件相次いだという。

 保育所は子どもたちの生活の場でもあり、子どもたちの成長のためにより良い条件でなければならない。また保育士にとっても安心して働ける条件であることも同時に必要である。いい加減な業者を参入させることを可能とし、子どもたちや保護者を不安に陥れたり、また保育士の労働をブラック化させるなど、とんでもないことではないか。