熊本地震被災で家計悪化、奨学金返済滞納:熊本県が被災者家族を提訴

 熊本地震で被災しみなし仮設住宅で暮らしている家族に対し、熊本県が「子どもの高校在学時に貸し付けた県育英資金を滞納している」として、返還を求める訴訟を起こしていたことが、9月30日までにわかった。

経過

 熊本日日新聞2018年9月30日『奨学金返済、地震被災者を提訴 熊本県「特別扱いできない」』によると、事実経過はおおむね以下の通りだという。

 一家は地震前は南阿蘇村で暮らし、子ども3人についてそれぞれ、高校在学時の県育英資金の無利子貸し付けを受けた。いずれも父親が連帯保証人となった。

 返還が始まった2014年より、1人あたり月6000円の返還をおこなっていた。しかし2016年4月に熊本地震で被災し、また震災前は自営で仕事をしていたものの仕事が激減し、一時期は収入がほぼ途絶えたという。当時看護学校に進学したばかりの長女は、進学先の学校からの退学を余儀なくされた。また一家はみなし仮設住宅への転居を余儀なくされた。

 地震発生後2017年3月までの約1年間については支払いは猶予されたものの、2017年4月以降再び返済を求められた。しかし地震被災による経済状況の変化で滞納を余儀なくされた。返済できないままになった額は、約145万円にのぼったという。

 父親は分割での支払いを申し出たものの、熊本県は滞納分を一括で返還するよう求め、熊本簡裁への提訴に踏み切った。

機械的な措置でいいのか

 熊本県は「生活が苦しくても返済を続ける被災者もいる。制度を存続させるためにも、提訴せざるを得ない」としているという。

 しかしその一方で、熊本日日新聞によると、識者の談話として、大震災という特殊な事情のもとで、生活再建すらままならない状態の被災者に対して、機械的な対応はどうなのか・猶予期間も短すぎたのではないかと疑問視する声が紹介されている。

 大震災からの復興や生活再建を考えると、日常生活すらままならず経済的にも厳しい状況で、さらに育英資金の返済を迫られることになる。故意での滞納ではなく、やむを得ない事情があることを鑑みれば、柔軟な対応を特例で制度化すべきだったのではないか。

 またこの家庭では、熊本地震によって進学した学校の中退を余儀なくされたということも紹介されている。学ぶ条件を保障するための奨学金・育英資金制度なのに、十分に活かせていないということにもなる。貸し付けから給付制への移行など、もっと根本的なところからの制度の変更・充実も、同時に必要ではないかといえる。