東京医大入試得点操作問題:日本社会のあり方そのものが問われている

 東京医科大学の入学試験で、女子受験生に対して女子というだけで一律に試験での点数を減点していたことが明らかになった問題。

 各マスコミで大きく報道されているが、本当にひどいものである。一部報道では、男子受験生への加点もセットで、合格者に対する女子学生の比率を一定以下に抑えるように操作していたともされている。

 問題点としては「女子というだけで、男子よりも不当に点数を下げる女性差別」「(性別属性に限らず)何らかの『属性』を理由にして特定個人・集団の点数を恣意的に操作することは、大学入試の公正性を害する」といったことがある。

 これだけでも許しがたいことである。

 オンラインメディア「ハフポスト日本版」が、東京医大を受験したが不合格になったという女子受験生の手記を公開している。この受験生は、産婦人科医を志望して東京医大を2年連続で受験したが不合格になり、現在は2浪中だということ。

東京医大目指し2浪の女性「同級生はインスタに花火。私は勉強。虚しくなります」
「女性を手助けしたいと医師を志したのに、女性だから、という理由でチャンスが奪われるとは皮肉です」

 受験生は、「今回私が点数操作によって不合格になったのかどうかは分かりません。単に実力が足りなかった、と言われてしまえばそれまでです」とした上で、「点数操作の報道には大きなショックを受けています」「男女平等、性差別をなくそうと言われている今日、このようなあからさまな性別による差別を当事者として受けるのは初めてのことでした」と語っている。

性差別的な暴挙の背景には?

 では、なぜ大学側は、あからさまな女性差別と非難されるような暴挙をおこなったのか。この背景についても報道されつつある。

 大学関係者いわく、「女性医師は結婚・出産ですぐ辞める」。

 この言い分は、女性差別的な特異な考え方を持った大学経営陣というだけのいわば単純な話ではない。医師のキャリアの問題、働き方の問題、病院経営の問題などが複雑に絡み合っているものだともされる。

 医師の長時間過密労働により、出産・育児と両立できないという問題が生じる。また医師の定員はギリギリで、医師が一人欠けるとその分は残った同僚医師の業務にしわ寄せがくる。医師を増やして負担を減らそうという方向で解決するのではなく、長時間過密労働を前提にして「長時間労働に縛り付けるのは男性のほうが都合がいい」「女性医師が働き続ける条件は作らない」という性別役割分担論・ジェンダーロール。それらのことが絡み合っているという。

 医学生から研修医を経て独り立ちする時期にちょうど結婚・出産適齢期が重なることもあり、また医大卒業後は大学病院の医局からキャリアをスタートさせることが期待されることもあり、医大入学の時点で男子学生がほしいという方向になり、それが極端になってこのような不正につながっているのではないかとも指摘されている。

 明らかになっていないだけで、他の医科系大学でもこういうことはあるのではないかとも指摘されている。

 しかし、医学部も学校教育であり、教育活動を通して理不尽で不当な差別をなくしていくための先頭に立つべき存在でもある。率先して差別的行為をしているようでは、日本社会がおかしなことになってしまう。

 この問題は、「一つの大学の入試判定で不公正な行為をした」というレベルではとどまらなくなっている。性差別の問題や働き方の問題、人生のキャリアの問題など、多方面から課題を突きつけられている。

 直接的には不公正な入試判定の問題ではあるが、日本社会のあり方全体が問われているのではないか。